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ビルマ情勢と米国の対ビルマ政策

2001年3月28日〜9月27日

米国国務省
2002年2月11日

序と要約

 ビルマ軍事政権と国民民主連盟(NLD)のアウンサンスーチー書記長はこの6カ月間、民政移管と人権尊重を目指し、非公開の信頼醸成対話を行ってきた。交渉当事者双方とも対話の内容を極秘としているが、2000年12月以降の政治囚および被拘留者およそ180人の釈放、国営メディアによるスーチーとNLDへの悪質な攻撃の停止といった、前向きで具体的な成果が数多く現れている。このプロセスの進展はゆるやかであり、スーチーは現在も自宅軟禁されている。しかしスーチーは、アウンシュエNLD議長、ティンウー同副議長を含む同僚のNLD党員と定期的に接触している。NLDと国際人権機関によれば、ビルマ政府は現在も1000人以上の政治囚を収監している。

 ビルマ国民の生活の質は悪化し続けている。貧困が拡大し、経済は財政赤字の拡大、インフレ率の上昇、エネルギー供給の不足、さらに、相変わらずの外貨不足が引き起こす結果を映し出し続けている。ビルマの全体的な人権状況は悲惨なもので、広範な人権侵害が続いている。ビルマの市民生活は、恣意的で時には残虐な軍政の命令に左右されている。少数民族居住地域では、超法規的処刑、強かん、失踪が引き続き報告されている。

 刑務所の状況は過酷で、生命を脅かす危険性すらあり、反体制的な政治的見解を表明したという理由での恣意的な逮捕や拘留が現在も発生している。非常に前向きな動きのひとつとして、国連のビルマの人権状況に関する特別報告官パウロ・ピネイロ氏の訪問許可を、ビルマ政府が6年ぶりに決定したことが挙げられる。また同政府は赤十字国際委員会(ICRC)に対し、国内の全刑務所と労働キャンプの半数への訪問を許可した。ICRCの訪問は刑務所と労働キャンプの状況に大きなインパクトを与えことが伝えられている。

 強制労働は依然として深刻な問題のひとつである。国際労働機関(ILO)総会は、ビルマ政府が強制労働の使用について効果的な対策を行っていないと結論し、ILO加盟国に対し歴史上初めて、強制労働を支持しないために、その政策を見直すように求めた。米国はこの決定を強く支持する。当初この決議を受け入れなかったビルマ政府は、ILOハイレベル・チームの2001年9月の派遣を受け入れることで、ILOの懸念に前向きに取り組む姿勢を見せた。

 米国のビルマ政策の目的は、民主化への前進、人権の完全な尊重、および効果的な麻薬対策にある。われわれはスーチーと軍事政権が現在行っている信頼醸成の対話を支持し、これが将来的には民主化に向けた有意義な変化へとつながることを期待している。またビルマの主要な関係国および同国の現在の人権状況を強く懸念する諸国との、高官レベルでの定期的な協議を行っている。

 欧州連合(EU)およびその他の関係国との協力の下、米国は対ビルマ制裁を継続している。その内容は武器禁輸、投資の禁止、ビルマ政府への直接援助の禁止、海外民間投資公社(OPIC、米政府の機関―訳注)と一般特恵制度(GSP)のもたらす恩恵の停止、ビルマ政府高官への査証発給禁止措置である。制裁は民主化への進展と人権の一層の尊重を支援することを目的に実施されている。これらの目標の実現に向かう有意義な変化があった場合、米国は建設的関与を後押しする施策を真剣に考察するであろう。

民主化の前進についての評価

 再検討期間(2001年3月〜2001年9月)を通じて、ビルマ軍事政権はNLDのスーチー書記長との対話政策を継続している。これはラザリ・イスマイル国連事務総長特使の助言によって2000年10月に開始されたものである。このプロセスは両者の相互理解にある程度寄与している。両当事者とも対話の内容を一切明らかにしていないが、信頼醸成を示す一連の意思表示は、現在も自宅軟禁中のスーチーを除いて、NLD中央執行委員全員を含む政治囚およそ180人の釈放という成果として現れた。ビルマ政府はまた、国営メディアを使ったスーチーとNLDへの悪意に満ちた攻撃を停止している。これは以前は新聞記事の中心的なテーマだった。更に軍政はラングーン管区内のNLD支部21カ所の再開と、通常の党活動の再開を部分的に許可している。これらの中には、NLD結党を記念する2001年9月27日の集会が含まれる。これには米国、英国、オーストラリア、フランス、ノルウェー、その他の国の大使および在外公館の代表が出席した。一方NLD側は、公の場での政府批判を緩めている。

 軍政はまたスーチーとの面会者を徐々に増加させている。3月以降の訪問者は、NLD中央執行委員の一部、国連の人権状況に関する特別報告官パウロ・ピネイロ氏、ILO派遣団、ラザリ・イスマイル国連特使、EU代表団、ラルフ・ボイス米国国務副長官などである。スーチーはまた、アウンシュエ議長、ティンウー副議長を含む同僚NLD党員と定期的に接触している。スーチーはこれらの会合の席上、現在の交渉への期待を強調するものの、議論の内容は一切明らかにしなかった。また、同氏への軟禁措置が解かれるのは、NLD書記長としての責務を完全かつ自由に再開することが許可されたときであることを示唆している。

 米国はこの信頼醸成プロセスを歓迎するものの、ビルマ政府に対し、信頼醸成の段階から、同国に民主主義に基づいた文民統治を回復することを目的とした、スーチーとの真の政治的対話へと移行することを求める。次に踏み出すべき重要なステップとしては、現在も収監中の政治囚1000人以上の釈放、スーチーの自宅軟禁からの完全な解放、NLD党本部の完全で自由な活動などが挙げられる。

麻薬対策の取組

 ビルマはアヘンとヘロインの世界有数の生産国である。しかし96年以降の国内生産量はアヘン、ヘロインともに低下している。2000年にビルマでのアヘンの生産量は推計1085トンで、96年の2560トンより約60%減少した。

 アヘン生産量が減る一方で、メタンフェタミンの生産量が急増しており、ビルマ政府と停戦協定を結んだ元反政府少数民族武装勢力が支配する辺境地域で伸びが著しい。96年には600万錠だったビルマ政府のメタンフェタミン押収量は、2000年には2,700万錠に達している。

 ビルマ政府が組織的に麻薬密売に関与しているとの証拠は一切ない。しかし官僚、特に辺境地域に駐留する腐敗した軍人が麻薬の生産と密輸に直接関与しているあるいは、麻薬取引を行う人物を庇護しているとの報告が、信頼できる筋から継続的に寄せられている。ビルマ政府は停戦協定を結んだ少数民族ゲリラに対し、麻薬生産と密輸の削減を支援するだけでなく、最近になってその活動を抑制するための行動を開始している。例えばビルマ政府は2000年11月、政府がモンコー防衛軍の支配地域を占領し、指導者のモンサーラーを麻薬密売容疑で逮捕している。モンコーはビルマ北西部のヘロイン生産の約3分の1を担う地域だと言われている。さらにビルマ政府は2001年8月と9月に、シャン州北東部のコーカン人勢力および地元民兵組織を繰り返し攻撃し、大量の麻薬密輸業者を逮捕している。

 ビルマ政府による国境を挟んだ隣国との協力には大きな前進が見られた。ビルマ政府は2001年に中国・タイ両政府と麻薬対策に関する覚書に調印し、タイと中国で行われた麻薬対策に関する4カ国会合(中国、ビルマ、ラオス、タイが参加)に出席した。現場レベルでは中国とビルマの警察当局の協力関係の強化により、コーカン地域での麻薬密輸業者が数度にわたって大量逮捕されている。

 2001年6月にビルマを「非協力」国に指定したファイナンシャル・アクション・タスク・フォース(FATF)の圧力により、ビルマ政府は資金洗浄(マネー・ロンダリング)に関する新法の起草をほぼ終えようとしている。この新法はFATFの懸念の多くを解決するものである。同法はすみやかに施行される必要がある。

 こうした措置が採られているものの、米国は麻薬対策に向けたビルマ政府の現在の努力が、国内問題の規模に見合うものだとは考えていない。経済成長と政府の資金の増加がアヘン生産への圧力を削減するとともに、麻薬対策予算の増加につながるだろう。米国は国連薬物統制計画(UNDCP)、その他のドナーと引き続き協力し、アヘン生産削減と代替作物栽培プログラムに取り組んでいる。米国は2001年9月に、UNDCPのワ州代替開発プロジェクトに100万ドルの追加資金提供を公約した。これはワ州連合軍(UWSA)の支配地域内でのアヘン生産の削減を目的としたものである。しかしこの追加資金は、2001年度内に他の資金供与国からの等価供与があった場合に運用される。

ビルマでの生活の質

  世界銀行の数字によれば、ビルマは1人当たりGNP約300ドルの最貧国にとどまっている。ビルマは農業経済を主としているが、大量の鉱物資源、水産資源、木材資源を保有している。しかし過去40年余りの軍政による失政と経済運営の失敗、軍隊への資源配分によって、貧困が蔓延する混乱した経済状態となっている。

 この6カ月間での財政赤字の増加、エネルギー供給の不足、恒常的な外貨不足によって経済活動は阻害され、ビルマの通貨チャットは急落している。2001年3月に1ドル=460チャットだったチャットの価値は、現在680チャットまで下落している。政府は豊作の結果、民間の米輸出を制限したため、一部の地域では米価が農民の生産コストを下回るレベルにまで下落した。同時に都市部ではインフレが加速している。アメリカ大使館が算出した都市部での小売物価指数によれば、ビルマの都市部でのインフレ率は、2001年8月の時点で年率約46%に達する。同じ指標に基づく上昇率は2000年8月時点では年率6%に過ぎなかった。

 この報告書の対象期間中もビルマ全土で過酷な人権侵害が続いている。とくに少数民族の居住地域では、超法規的処刑、強かん、失踪に関する数多くの報告が行われている。刑務所の状態は依然として劣悪で、反体制的な政治的見解の表明を理由とする恣意的な逮捕や拘留が引き続き発生している。赤十字国際委員会は過去2年間で、国内の刑務所35カ所すべてと100カ所余りの労働キャンプの約半数を訪問することができた。訪問は、刑務所と労働キャンプの状況に対し、大きな積極的効果を及ぼした。

 著名な政治囚や非拘禁者の一部が再検討期間中に釈放された。この中には、8月のラザリ・イスマイル国連特使の訪問直前に釈放されたアウンシュエNLD議長、ティンウー同副議長の他、主要な民族指導者数名と1990年総選挙で選出された国会議員25人余りが含まれる。2001年9月の時点で政治囚1000人以上が依然として拘留あるいは刑務所に投獄されたままである。この数字には国会議員29人が含まれる。

  ビルマ政府は2001年4月に、国連のビルマの人権状況に関する特別報告官の訪問を6年ぶりに許可した。パウロ・ピネイロ国連特別報告官は2001年10月に、滞在期間を延長した再度の訪問を計画している。

 ビルマ政府が使用を抑制しようとしているにもかかわらず、強制労働は依然として深刻な問題のひとつである。国際労働機関(ILO)理事会は2000年11月に、ビルマ政府が国内での強制労働の使用に対し、効果的な対応をとらなかったと結論し、設立以来初めて、ILOのメンバーに対し、強制労働を助長していないかを確認するため、その政策を見直すよう求めた。米国はこの決定を強く支持する。

 ビルマ政府は過去数カ月、強制労働問題に取り組むにあたりILOに協力する意思のあることを示した。ビルマ政府は、同国へのILOの恒久駐在の提案を引き続き拒否する一方で、強制労働に関する状況の調査を目的としたILOハイレベル・チームの訪問を許可した。調査団は9月17日にビルマに到着した。

多国間戦略の開発

 米国のビルマ政策の目的は、民主化への前進、人権の完全な尊重、および効果的な麻薬対策、またHIV/AIDSなど社会面、保健面での深刻な懸念に取り組むための処置にある。われわれはスーチーと軍事政権が現在行っている信頼醸成策を支持し、これが将来的には民主化に向けた有意義な変化へとつながることを期待している。またビルマの主要な関係国および/また同国の現在の人権状況を強く懸念する諸国と高官レベルで定期的な協議を行っている。

 米国は、国連総会および国連人権委員会で毎年採択されるビルマに関する決議の共同提案国である。われわれはまた、強制労働の広範な使用を停止するための効果的な取り組みを怠ったとして、ILOがビルマに関して行った、前例のない決定を支持している。最も重要なことだが、われわれはビルマに関する国連事務総長特使ラザリ・イスマイル氏の任務を強く支援する。氏はスーチーと対話を行うよう軍政を説得するにあたって助力を行っている。

 欧州連合(EU)およびその他の関係国との協力の下、米国は対ビルマ制裁を継続している。その内容は武器禁輸、米国によるビルマへの新規投資の全面的禁止、すべての二国間援助の停止、一般特恵制度(GSP)が与える特権の取り消し、海外民間投資公社(OPIC、米政府の機関―訳注)と合衆国輸出入銀行のプログラムの計画に対する不同意、ビルマ政府高官への査証発給禁止措置、また世界銀行、国際通貨基金(IMF)、アジア開発銀行(ADB)、またその他の米国が主要な出資者である国際金融機関によるすべての新規の資金貸付あるいは資金譲渡の凍結である。米国の外交代表のレベルは1990年に大使から代理公使へと格下げされた。

 わが国の制裁は民主化への進展と人権の一層の尊重を支援することを目的に実施されている。これらの目標の実現に向かう有意義な変化があった場合、米国は建設的関与を後押しする施策を真剣に考察するであろう。

(訳、箱田 徹)

出典:U.S. Department of State, 'Conditions in Burma and U.S. Policy Toward Burma: For the Period March 28th, 2001 - September 27th, 2001', February 11th, 2002.





(c) ビルマ情報ネットワーク(BurmaInfo) 1997〜



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