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政治囚支援協会による報告書
『ビルマ:僧侶が還俗させられ、投獄される国』について

 以下の文書については、目次と要約がそれぞれPDFでご利用いただけます。
目次のダウンロード
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書誌

発行者: 政治囚支援協会(ビルマ)
Assistance Association for Political Prisoners (Burma)
原題: A Land Where Buddhist Monks Are Disrobed and Detained in Dungeons
発行年月: 2004年11月
英語版: http://www.aappb.net/monkreport.pdf

要約

 ビルマでは人権問題や民主化運動、平和的な抗議行動に関われば誰でも逮捕される。したがってビルマ社会では、政治活動家が軍情報部に逮捕される可能性が飛びぬけて高いのではない。僧侶もまた同じ危険にさらされている。ビルマ国内の刑務所には比丘と沙弥(見習い僧)約300人が拘束されており、現在も約1400人の政治囚が投獄されている。

 軍事政権は1988年の民主化運動以来、僧侶を潜在的に強力な革命勢力とみなし、あらゆる社会階層とともに僧侶を厳しく取り締まってきた。1988年8月、9月に平和的に行われた反政府デモでは、軍事政権は僧侶、学生、市民を含む多数の参加者を殺害した。

 僧侶は非暴力的な方法で運動に参加しているが、逮捕や投獄を免れるわけではない。ビルマにあるのは法の支配ではなく、「法と秩序」の支配だ。したがってどんな場合でも令状抜きの逮捕が行われ、被疑者は軍の収容施設で残酷な尋問に苦しめられる。こうした逮捕劇の後の裁判は、ほとんどの場合、弁護士を要請する権利を被告に一切与えず、秘密裏に実施される。裁判は形式的なものだ。まず「裁判官」が起訴状を読み上げ、続いて被告が有罪か無罪かを主張するよう求められる。だが裁判官は常に有罪の判決を言い渡す。

 逮捕された僧侶(見習僧を含む)の大半が、緊急事態法第5条(J)で起訴される。この法律は拡大解釈が可能で、「戒厳令」が宣言されていない時でも反政府活動家弾圧に使用されている。刑法第295条「宗教に関する違法行為」罪で訴追された僧侶もいる。このほかの刑法の条文で逮捕、起訴される僧侶もいる。1990年10月に僧侶が軍政へのボイコット運動を起こすとすぐに、軍政は「サンガ(僧団)組織関連法」(「サンガ法」)を成立させた。国家によるサンガへの介入である。この年には、同法に違反したとして200人以上の僧侶、見習僧が有罪を宣告され、僧籍を剥奪された。

 サンガ法によって公認9宗派すべてが全国サンガ組織の構成員となった。すべての僧侶すなわちサンガの全構成員が、政権の定める法規を遵守せざるを得なくなった。言い換えれば、軍事政権が発する命令や法令はすべて、僧侶を厳しい管理下に置き、社会運動への関与を妨げるために作られているのである。

 仏教の戒律によると、たとえ僧侶を強制的に還俗(訳注:文字通りの意味は、僧衣を強制的に脱がすということ)させても、本人の意思がなければ在家者に戻ることはない。逮捕、投獄された僧侶の多くは戒律を堅持し、軍政の手で還俗させられたからといって在家者になったとは考えていない。しかしビルマ軍政当局、とりわけ軍の尋問センターや刑務所内の人間は、すでに僧衣を纏っていないこうした僧侶を、一般刑事囚と変わらないとみなし非人間的に扱っている。

 この報告書の狙いは、近代ビルマ史上で最も敬虔であると主張してみせる軍事政権が行う、最悪の行動の一端を明らかにすることである。調査者は国内からの情報収集を行うにあたり、様々な困難に直面しており、ここで用いたデータや情報は10年間に及ぶ逮捕劇のほんの一端を示すに過ぎない。だがここで扱う情報の信頼性は、議論の余地のないものだ。

 報告書は、事件が発生後からこれまで押しつぶされ、誰からも聞かれずにいた声に言葉を与えようと編まれた。報告書の出版を通して、私たちはこうした声が人々の耳に届くことを願っている。

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勧告

 政治囚支援協会(ビルマ)は、以下の勧告を行なう。

ビルマ軍事政権=国家平和開発評議会(SPDC)への勧告

  1. 還俗させられたうえ、ビルマ国内の刑務所に今も収容されているすべての僧侶、見習僧、女性出家者(ティラーシン)を即時釈放すること、
  2. 基本的人権の侵害を即刻中止すること。とりわけ軍人、警察官、刑務所関係者による恣意的な身柄の拘束、拘束中の虐待、裁判なしの処刑を即座に停止すること、
  3. 国際人道法に基づいて、子ども、女性、民族的または宗教的少数者を含むあらゆる市民の権利を十分に尊重し、同法への侵害行為から人々を保護すること。

国際社会への勧告

  1. ビルマ全土及びビルマ社会のあらゆる階層で続発する人権侵害を行っているとして、ビルマ軍事政権を非難すること、
  2. 国連人権委員会の「ビルマに関する決議」に記された勧告を履行するよう、ビルマ軍事政権に圧力をかけること、
  3. ビルマ軍政が僧侶を含むあらゆる市民に行う弾圧を、公の場でありのままに証言するよう、ビルマ国内で活動する国連機関や国際NGOに働きかけること、
  4. 国民の要求に基づいた平和的な政治権力の移譲を行うよう重ねて求めること、
  5. ビルマが民主主義へ移行するまで、軍事政権に対するすべての援助を差し止めるよう関係国と関係機関へ求めていくこと。

全世界の仏教団体への勧告

  1. 還俗させられたうえ、ビルマ国内の刑務所に今も収容されているすべての僧侶、見習僧、女性出家者を即時釈放するようビルマ軍事政権に要求すること、
  2. 政治のために宗教を道具として使用し、サンガに国家を介入させているとして、ビルマ軍事政権を非難すること、
  3. ビルマの政治状況が妥当な方法に基づいて改善されるまで、同国内で実施されるあらゆる宗教会議、研修、交流活動、旅行などへの参加を拒否すること。
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序文

 ビルマ国民の大多数は仏教徒である。ビルマ軍事政権は、この事実を踏まえ、ビルマ国民主義の確立に役立つ国家イデオロギーとして仏教を捉えてきた。だが逆説的なことに、サンガは、軍政の支配を直接脅かす存在であるとも見なされている。なぜならサンガが強力で、民衆の間に定着しているからだけでなく、サンガこそが、軍隊の考え方の根幹と相容れない、不殺生戒を掲げた仏の教えを体現しているからでもある。民主主義の回復を求めるビルマ国民の現在の闘争の中で、僧侶は最も活動的な部分を担っているのである。

 1988年にビルマは孤立主義政策を終え、活発な外交政策を展開するようになった。この政策に従い現軍政は、インド、中国、タイ、バングラデシュ、ラオスなど近隣諸国との関係強化に重点を置いている。さらに観光産業、特に宗教観光の振興にも取り組んでいる。ビルマ軍事政権は、2年に1度開催される上座部仏教徒の世界的な集まりである「第4回世界仏教サミット」の開催を12月に控え、ホスト国として準備を進めている。第1回は日本、第2回はタイ、第3回はプノンペンで2002年に開催された(訳注:日本側スポンサーが撤退したため軍政の単独開催となった。名称は「世界仏教サミット」に変更)。

 軍政に批判的な人々の間には、ビルマ軍政が日本の「念佛宗無量寿寺」と協力してこのサミットを招致したことを問題視する意見もある。またビルマ国内の仏教徒の多くは、会議がビルマと仏教に恩恵をもたらすとは考えていないようだ。むしろ軍事政権が自分たちのためにやることだと考える人が多い。

 多くの僧侶が、良心の故に、いまだ獄中にいることは疑いようのない事実だ。軍政当局は、民主主義を支持する僧侶を、僧衣を纏った悪人と非難し「ハゲ頭」(ガドン)呼ばわりする。ビルマ民主活動家の大半は宗教を政治の道具とすべきではないと考えている。釈尊は生前、ある王国の民主体制を賞賛したので、仏教社会は民主主義の掲げる価値と諸原則に基づくと主張する活動家もいる。このように世界で最も非民主的な国の一つであるビルマが、「仏教サミット」を開催することは馬鹿げているというのが多くの考えなのだ。

 こうした見方があるにもかかわらず、現軍事政権はサミット開催の決定を撤回する意思も示さず、自らの民主的な価値や人権基準にも疑いを持つことがない。軍政当局は、相変わらず政治囚の存在を否定している。それどころかビルマの囚人は刑法犯だけだと主張するのだ。軍政のこうした行動にありありと現れるのは、ビルマ国民はただ支配されるだけの存在に過ぎず、自分たちが永遠の支配者だというメッセージである。

 昨年11月、ラングーン管区のガバエーティピタカ・マハーガンダーヨン僧院の見習僧26人が逮捕された。この事件もまた、自らの要求に沿わないあらゆる物事、どのような人々に対しても不寛容で望むという軍政の姿勢を改めて浮き彫りにしたものだった。国家が非民主的で、凶悪な政府に支配されている限り、平和と静穏を求めて僧侶と在家者が活動できるような、心地よく望ましい環境は決して存在しないのである。

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目 次

本編
謝辞 5
要約 6
勧告 8
序文 9
歴史的背景 10
僧侶とビルマ社会 10
社会主義計画党政権下での僧侶 12
88年以降の軍政と僧侶 13
1990年マンダレーでの僧侶の「鉢伏せ」行動(軍政への不受不施) 14
僧侶の行為への軍政側の対応 15
強制還俗 16
刑務所と囚人労働キャンプでの拷問、虐待 17
敬虔な指導者を演出する軍事政権 19
2003年のマハーガンダーヨン僧院での「鉢伏せ」 20

資料編
資料1-a マハーガンダーヨン僧院の「鉢伏せ」で逮捕された僧の写真と経歴 25
資料1-b 釈放された僧の写真 29
資料2 1990年サンガ法 (1990年10月31日公布) 35
資料3 1990年サンガ法の分析(ビルマ法律家委員会) 38
資料4 「パッタムニックッジャナカンマ」(鉢伏せ=僧侶のストライキ行動)について 42
資料5 青年僧侶連盟(下ビルマ)、僧侶連合連盟(マンダレー全地域)「すべての僧侶と国民への嘆願書」 43
資料6 「鉢を伏せて」投獄された僧侶の証言 45
資料7 収監され囚人労働キャンプに送られた僧侶の証言 50
資料8 鉢伏せ行動に参加したが、逮捕を逃れた僧侶の証言 55
資料9 ミッチーナ刑務所と強制労働キャンプで僧侶を見た元政治囚の証言 58
資料10 マンダレーの新マソーイェィン僧院の僧侶へのラジオ・インタビュー 63
資料11 僧侶の逮捕について(ある僧侶へのインタビュー) 65
資料12 チャウセー暴動の目撃者へのインタビュー 67
資料13 マハーガンダーヨン僧院の「鉢伏せ」事件に関する僧侶の証言 69
資料14 僧侶と現軍政の関係について(国内の僧侶へのインタビューの抜粋) 71
資料15 ナインチョー「刑務所にいる仏陀の息子たち」 73
資料16 ウィンナインウー「獄中の僧侶(1)」 77
資料17 ウィンナインウー「獄中の僧侶(2)」 79
資料18 ウィンナインウー「獄中の僧侶(3)」 81
刑務所または強制労働キャンプで亡くなった僧侶の一覧 83
現在も獄中にいる僧侶の一覧 84
略語表、用語解説、引用文献 92
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(c) ビルマ情報ネットワーク(BurmaInfo) 1997〜



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