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声明入管収容所内の検閲に抗議する
1999年1月12日 東日本入国管理センターに1998年6月1日以来収容されているZについて、当弁護団は以下の事実を確認した。この事実は東日本入国管理センターにおける広汎かつ一般的な事前検閲がなされていること、収容者の表現の自由に対する重大な制約が日常的に行われていることを示しているものである。当弁護団としてはこのような検閲の実態を重大な人権侵害の事実と認識することを表明するとともに、入国管理局に対してこのような検閲の実態についてその運用実態を開示し、事前検閲にあたる運用については直ちに改められるように申入れるものである。 一 事実経過11月29日頃、Zは国会議員5人への手紙を書いて、東日本入国管理センター職員に提出した。 信書を発信するとき、収容者は一般的に自分で信書を封筒に入れて渡すことはできず、封筒と手紙を別々に封をせずに渡すことになっている。Zも同じ方式にしたがって、職員に5通の手紙を渡している。
それから2〜3日後、Zのところへ東日本入国管理センター職員がやってきて、一部について線を引いて文章を削除するように求められた。 What is wrong in my letters? I did not read any words against you. You do not think I am not suffering? If I am not criminal, why do you keep me in detention for more than 8 months?等と答え、当初線を引くことを拒否していた。これに対して入管職員から”この文章は私たちにとってよくないものである”との指摘を受け、さらに、もし指摘の個所について線を引いて削除できないならば、手紙を送ることはできないと言われた。 最終的に、Zは線を引いて消す形にしても読むことはできると考えて、やむを得ずこれに応じて手紙に線を引いたうえで、この手紙を再度職員に返した。 さらに、そのおよそ3〜4日後くらいに再び職員がやってきて、Zに対して線を引いた部分について修正液(いわゆるホワイト)で消すように言ってきた。これに対してZは次のように入国管理局職員に抗議をしたという。 Please do not force me to do this. I am not a baby. I can not do this because these people [parliamentarians] are respectful for me and also for the Japanese people. I am not playing with them but am only asking for help. I did not write anything improper. I wrote about my sufferings and opinions in the letters. Zはホワイトによる削除には応じなかった。 その後、このZが書いた手紙は12月8日の消印で送られたようである(5通のうち3通を確認した)。なお、入管において確認したところ、5人の国会議員に対してすべて発送されているとのことである。 以下には5人の議員への手紙について、現在確認できている3名分について、入管から削除を指示されラインの引かれた部分を明示する(英字の下線を引いた部分)。 ■小杉隆議員への手紙 I was rejected entry, after that I was immediately locked uptogether with the existing criminals and overstayers in their detention rooms ■竹村泰子議員への手紙
■保坂展人議員への手紙
二 法的問題以上のような運用は、明らかに広汎かつ一般的な検閲に該当するものであり、日本国憲法21条第2項が禁止する検閲にあたり憲法に違反する運用である。 また、市民及び政治的権利に関する国際規約(以下B規約)17条及び19条違反であることも明白である。 たしかに、入管法には61条の7・第5項には「入国者収容所長又は地方入国管理局長は、入国者収容所又は収容場の保安上必要があると認めるときは、被収容者の発受する通信を検閲し、及びその発受を禁止し、又は制限することができる」との規定があるが、この法律自体が検閲を許容する範囲について広汎かつ不明確に規定するものであり、それ自体として憲法に違反するものといいうる。仮に規定の存在そのものが違憲ではないとしても、今回の運用そのものは、あらゆる信書について検閲がなされている実態があり、かつ何ら保安上の理由から抑制する必要のない文章の削除を求めているところからみても、違憲であると言わざるをえない。 三 今回の検閲のもつ人権制約の重大性今回の処置には法的に以上のような違憲・違法な問題がある。そして、さらに重大なことは、今回の文書の内容が、入管における処遇について国会議員に向けて訴えて、支援・救済を要請するものであり、そのような信書を処遇する側の入管が抑制しようとしている点である。 Zは自分に対する処遇について事実認識を述べ、その意見を表明して入管による行政的処遇についての訴えをおこなったに過ぎない。その訴えを抑制することは、まさに処遇する入管側にとって不都合な内容を抑制しようとする意図に基づくものにほかならない。 検閲の禁止が表現の自由の中で格別に規定された趣旨は、まさに上記のような当局による事前抑制が自由権に対する重大な制約を招いてきたからにほかならず、今回の事態はその歴史的な意義をそのまま明らかにしていると言い得るものである。 さらに、入管行政に対する意見を国会議員に対して訴えようとした信書を制限したことは、立法府による行政作用に対するチェック機能を拒否するものであり、国会や国会議員の活動に対する冒涜でもある。 四 規約人権委員会最終見解に対する無視・逆行先日の規約人権委員会による日本の入国管理局の問題に対して勧告が出されているのに、今回の事件は入管においてはその趣旨が全く考慮されていないことを端的に示しているという点である。 規約人権委員会での最終見解(CCPR/C/79/Add.102)では第19項で次のように指摘されている。 「委員会は、入国管理に至る手続中に(訳者註:退去強制手続や上陸許可手続)収容されている人達への暴行や性的嫌がらせの訴えについて懸念している。この中には、苛酷な収容状況、手錠の使用、隔離室への収容といったことも含まれている。 この最終見解は、例えば次のようなカウンターレポートをも考慮して確定されたものである。
すでにこのように通信に関する問題が指摘されていながら、入管においては、この問題の改善が全くなされていないばかりか、収容者の基本的人権を全く顧みる意思のないということを言わざるをえない。 1999年1月12日 在日ビルマ人難民申請弁護団 |
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