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国際人権NGO資料

第90回ILO総会に関する報告書
2002年5月1日配信 アムネスティ・インターナショナル 

この報告書はアムネスティ報告書 Fundamental Rights At Work:Amnesty International's Concerns to the International Labour (2002) からビルマ(ミャンマー)のセクションを抜粋したものであり、ビルマ(ミャンマー)の問題以外にも勧告を行っているため、第8,9,10勧告となっております。(訳:箱田 徹)

第90回ILO総会(2002年6月4日~20日、ジュネーブ)に関する
アムネスティ・インターナショナル報告書

AI-index: IOR 42/001/2002

2002年5月1日

ビルマ(ミャンマー)
 アムネスティ・インターナショナルは2002年2月から3月にかけて、タイ国内の様々な地点で、シャン、アカ、ラフ、バマー(ビルマ)、モン、タボイ、カレンの各エスニック・グループに属する難民と移民労働者100人余りにインタビューを行った。

 インタビューを受けた人の過半数がビルマ(ミャンマー)軍のための労働を強制されたことがあると答えた。また強制労働については、件数が減少したと述べる人がいる一方で、インタビューを受けた人の大半はアムネスティ・インターナショナルに対し、昨年一年間の間に(ごく最近の2002年2月との回答もあった)、強制労働を行わなければならなかったと述べた。

 アムネスティ・インターナショナルは、ビルマ(ミャンマー)政府と国際労働機関(ILO)が2002年3月に同国内のILOのプレゼンス拡大について合意したことを歓迎する。この合意に従い、2002年6月までにリエゾン・オフィスが設置されることになった(勧告10を参照)。

 アムネスティ・インターナショナルに報告された強制労働の中で最も多かったのは、これまでと変わらずインフラ整備事業(主に道路工事)と、軍が住民から接収した畑での労働だった。その一方で軍のポーター役を務めなければならなかったと話すインタビュー対象者もおり、荷物を運ぶことができない、あるいは兵士の隊列についていけないと殴られる場合もあったという。

 シャン人、ラフ人、アカ人によれば、シャン州中南部でSPDC(注7:SPDCは国家平和発展評議会。ビルマ(ミャンマー)の最高立法権者で国権の最高機関。)が行う反ゲリラ作戦の影響を受けた郡では強制労働が高い割合で存在している。

 シャン州南部ナムサン郡出身のシャン人零細農民(30、男性)(注8:安全確保の観点から、インタビューを受けた証人の氏名は記していない)はアムネスティ・インターナショナルに対し、自分の居住地域での強制労働は最近4年間で増加したと述べた。そして基地の塹壕堀り、軍の畑での労働を週1回行わなければならず、最後に強制労働を行ったのは2002年2月10日だと述べた。またほぼ同時期に軍のポーター役も強制されたという。彼は干し肉を運ばされたが、これはビルマ(ミャンマー)軍が自分たちの食糧用に射殺した住民の牛から作られたものだった。ポーターへの強制徴用を避けるため、彼はおよそ月に2回ポーター税(訳注:徴用を逃れるために軍に支払う金銭のこと)を払っていた。
 インタビュー対象者に対し、SPDCが1999年に公布した強制労働禁止に関する1999年の命令1/99(注9:「命令1/99」と「命令1/99の追加命令」は1999年5月14日に発布され、強制労働の徴用を違法とし、そうした行為を禁止し、ビルマ(ミャンマー)連邦が定める法規に違反すると定めている)について聞いたことがあるかと尋ねたところ、複数がこの命令について聞いたことがあると答えた。村長が住民を集め、強制労働は今後一切存在しないとのSPDCからのメッセージを伝えたという。しかし命令を聞いたことがあると答えた人は異口同音に、自分が経験している強制労働の程度は少しも変化していないと述べた。

 さらにシャン州のこの地域(ナムサン郡)の住民は、ポーター税や治安税などの形の恣意的な徴税にも苦しみ、 徴税額はいわば略奪のレベルに至ることもあった。住民は収穫した米や作物の一部を、市価の半額でSPDCに強制的に売却させられた。売却量は収穫量に左右されず、売却価格は固定されていた。専門家委員会が29号条約に基づき過去に定めたILOの法解釈は、徴税は実際に支払いが可能な形態で行われなければならないとし、また現金経済ではなく自給自足経済が営まれているケースでは、その分の現金を工面する手段がないのに課税を行うことは、その金額を得るための労働を人々に強制することだとみなしている。

 人々はまたモン州、カレン州南部の一部、またテナセリウム管区のいくつかの郡で自分が行わされた強制労働を報告している。これらの地域の人々でSPDCの命令1/99を知る人は相対的に少なかったが、聞いたことのある人もおり、その場合は多くが村長から伝えられている。

 2002年2月後半にタイに到着した、ビンロウジを栽培するモン人農民(27、男性)は、モン州イェ郡の村を離れた理由のひとつが強制労働だったと話す。この農民はイェ町とコーザを結ぶ道路の補修のために度々労働しなければならなかったという。イェ町から「13マイル(20.8km)」地点に駐屯する第299軽歩兵大隊のための労働だった。この農民は、この強制労働の対価を受け取ったことは一度もなく、軍のための労働を初めて強いられたのは17歳の時だったと述べた。村では村長が2001年5月に住民全員を集め、SPDC命令1/99があるため強制労働は今後存在しないと告げたという。しかし会合後も強制労働の量に変化はなく、命令1/99は「この地域では笑いの種」だと述べた。また軍のゴム農園、ビンロウジ農園で働かなければならず、軍のための強制ポーター割当も行わなければならなかったという。
 アムネスティ・インターナショナルがビルマ(ミャンマー)東部のこれらの地域で収集した証拠によれば、SPDCが行う強制労働の使用の一掃のための努力は真剣なものではないと見られる。基地付近の住民は従来どおり、基地から離れた場所に住む住民と比較し、より多くの強制労働を行わなければならなかった。インタビューを受けた100人のうち、労働の対価を受け取った経験のある人は1人もいなかった。エスニック・マイノリティに属する民間人の不払い強制労働が、とりわけ大量のSPDC兵が進軍する地域で、現在も続いていることは明らかである。上述した他の要素と関連した強制労働によって、タイを目指すビルマ国民の大量の人口移動が引き起こされ続けている。SPDCが反ゲリラ活動を展開する地域と軍事施設の周辺地域では、強制労働の使用が確立され、特有であるように見られる。

 ビルマ(ミャンマー)政府は1939年の強制労働条約(29号条約)を批准しており、この条約は可能な限り短期間であらゆる形態の強制労働の使用を停止することを求めている。強制労働は「或者が処罰の脅威の下に強要せられ且右の者が自ら任意に申出でたるに非ざる一切の労務を謂ふ」と定義されている。1957年の強制労働廃止条約(105号条約)は、政治的な抑圧または教育の手段として、あらゆる形態の強制労働を用いることを禁止している。これはビルマ(ミャンマー)政府の未批准条約の1つだが、8つの基本条約の1つであり、従って同政府にはこの条約の主題となる諸原則を誠実に尊重する義務がある。

第8勧告:ILO加盟国すべてを拘束する国際労働基準の継続的な違反という観点から、アムネスティ・インターナショナルはすべての加盟国に対し、ILO憲章33条に基づき第88回ILO総会で可決された決議を直ちに実行するよう求める。加盟国内のすべての政府、雇用者、被雇用者はビルマ(ミャンマー)と自国との関係を見直さなければならない。その2国間の関係によりビルマ(ミャンマー)が強制労働を拡大しようとするのを防がなければならない。

第9勧告:アムネスティ・インターナショナルはILO総会に対し、ビルマ(ミャンマー)政府には29号条約が定めた義務の履行責任があることを確認し、同国政府にこの国際条約が定めた義務を直ちに履行するよう要求することを求める。

第10勧告:アムネスティ・インターナショナルはビルマ(ミャンマー)政府に対し、ILO職員への協力を、国内のいかなる場所および人々との接触を認めることを含め、全面的なものへと拡大することを求める。

Source: 'Myanmar' in Amnesty International's Concerns to the International Labour Conference (4-20 June 2002, Geneva), AI Index: IOR 42/001/2002, 1 May, 2002.