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国際社会

日本はミャンマーについての公約を果たすべき
2009年6月2日配信 インターナショナル・ヘラルド・トリビューン/朝日新聞

3月に来日いたしましたベネディクト・ロジャーズ(クリスチャン・ソリダリティ・ワールドワイド)さんの寄稿が、本日付のインターナショナル・ヘラルド・トリビューン/朝日新聞の「ポイント・オブ・ビュー」(寄稿)欄に掲載されました。

ビルマの民主化指導者でノーベル平和賞受賞者のアウンサンスーチー氏は先月法廷に立った。それも新たな、でっち上げの容疑によってである。氏はすでにこの19年のうち13年を自宅軟禁状態に置かれてきた。もちろんスーチー氏は何の罪も犯していない。罪を犯しているのはビルマ政府の側だ。

スーチー氏に対する今回の勾留は、不道徳で粗野なこの軍事政権に典型的なやり口である。1年前、ビルマ軍事政権は不正な国民投票によって見せかけの憲法を国民に押しつけた。これは国軍による支配を正当化し、民主化勢力と主要な民族集団を排除する代物だ。国民投票はきわめて形式的なもので、軍政は投票率が99%で、うち賛成票が92.4%だったと発表した。だが当局は人々を脅迫し、嫌がらせを行い、恫喝し、買収して賛成票を投じさせた。一部ではそもそも投票すること自体ができなかった。地元当局が自分たちの都合の良いように投票用紙にマルをつけたからだ。こうした動きの後ろには、憲法に対する批判を禁止し、反対投票を呼びかけた者を投獄すると定めた法律があった。

この国民投票は、ビルマ史上最悪の人道危機をもたらした、2008年5月2日のサイクロン「ナルギス」襲来からわずか1週後に実施された。サイクロンそのものによる被害と、軍政が国際社会からの援助を当初拒否していたこととが重なり、少なくとも14万人が死亡し、250万人が被災した。軍政が被災者支援を怠ったこと、そして外部からの支援を拒否した(後に規制することに転じた)ことは犯罪的なものだった。国民が生存のために必死になっているにもかかわらず国民投票を実施したという事実は、軍政の無慈悲さをいっそう際立たせた。

軍政の非人道的な性格はこのようにして白日の下にさらされたのだが、これは過去の残虐な行いの延長線上にある。2007年の民主化運動、いわゆる「サフラン革命」での仏教僧への残忍な取締りは、世界に衝撃を与えた。死者の一人は日本人フォトジャーナリストの長井健司氏だった。他方で、数十年におよぶビルマ東部での民族浄化を狙った軍事作戦は、人道に対する罪に値するものだ。戦争の武器としての強かん、強制労働、民間人を地雷原の盾にする「人間地雷探知機」、非戦闘員の殺害、3,300以上の村落の破壊によって、ビルマはアジアのダルフールと化している。ビルマの民主化指導者アウンサンスーチー氏の自宅軟禁措置は13年を越えるが、氏は今、世界で唯一の身柄を拘束されたノーベル平和賞受賞者である。国連は、スーチー氏の勾留が国際法とビルマ国内法に共に違反すると判断している。

こうした状況の下では、誰でも日本政府がはっきりとした態度表明を行うと思うだろう。アジア地域で指導的な立場にある民主国家として、ビルマに変化をもたらすため、日本は自らの影響力を用いることができる。しかし実際には、外務省はきわめて融和的な外交方針をとり続けている。

ビルマ政府は最近6,313人の囚人を釈放すると発表し、日本政府はこれを歓迎した。しかし政治囚はこのうちのわずか30人に過ぎない。しかも外務省は、この時点でも獄中にあり、凄まじい拷問にさらされている2,100人以上の良心の囚人の存在に言及していない。これまでにも軍政は、釈放した一般刑事囚を軍政の別働隊である民兵組織に雇い入れ、民主化活動家に暴力を加えさせていた。最近釈放された刑事囚がこの目的のために雇われたとしても何ら不思議ではない。

私はこの1年で、外務官僚と協議する機会が二度あった。そして二度とも『不思議の国のアリス』の世界に迷い込んだような錯覚に陥った。国民投票の前のときはこんな体験をした。私が投票プロセスに対する懸念を表明したところ、外務省の担当者の一人は軍政を擁護してこう言った。「ミャンマー政府は最善を尽くしています。」 そして続けた。「完璧な制度なんてないじゃないですか」と。この官僚はビルマの国民投票を、2000年の米国大統領選のフロリダ州での開票作業と比べた。「ミス」はあってもおかしくないのです、というわけだ。そこで私が「国民投票で反対票を投じるよう呼びかけたビルマ人は捕まっているじゃないですか」と指摘すると、先方は「ミャンマー政府には『デュー・プロセス』(法の適正手続)があります」と言うのだ。「それ、どういう意味ですか」とさらに私が尋ねると、こんな答えが返ってきた。「当局はいきなり人を投獄したりはしません。まず裁判にかけています。」

そしてこの3 月、私はこの官僚に再会した。そして今度もまったく同じレトリックにお目にかかった。ビルマ政府は2010年に総選挙を予定しているが、それは国民投票と同じくらい不正まみれになるだろう。だが外務省は選挙を歓迎し、技術協力を行うという。私は彼に「今度の総選挙が自由で公正なものになるなどと思っている人はいませんよ」と念を押した。彼の答えはふるっていた。「そうはおっしゃりますが、何が『自由で公正』なのかを定義するのはたいへん骨が折れることなのです。」

今回アウンサンスーチー氏は悪名高いインセイン刑務所に移送された。新たな、どこからどうみても虚偽の容疑が根拠なのだ。これに対して外務省は単に「深い懸念」を持って事態を「注視」するに留まっている。他方でスーチー氏の弁護人は弁護士資格を取り消されている。それにもかかわらず、日本政府は「2010年の総選挙が国際社会から評価されるものとなること」をいまだ期待するというのか。もう勘弁してほしい。

日本にはビルマに対する歴史的な義務がある。アウンサンと30人の志士との関係から第二次世界大戦でのビルマ占領を経て、アウンサンスーチー氏の京都への留学や、最近では長井健司さんの殺害に至る経緯がある。しかし私が面会したような外務官僚は、この義務を果たすという意味ではまったくの役立たずだ。こうした人々が軍政の汚いやり口を黙認するようなことを止めさせるべきだ。そして軍政による見せかけの総選挙を認めないことをはっきりと宣言し、国連安全保障理事会の武器禁輸を支持する積極行動型のリーダーシップを確立するべきだ。日本政府は、ビルマ軍政幹部について対象限定型の金融制裁措置を導入し、人道に対する罪に関する国連の調査委員会設立を支持するべきだ。今こそ日本は、およそ70年前に示した虚偽の公約を果たすべきではないのか。ビルマ国民が自らを解放し、かれらがこれまで多大な犠牲を払って目指してきた真の独立を達成する援助をするという公約を、である。

ベネディクト・ロジャース (Benedict Rogers)はライターで、クリスチャン・ソリダリティ・ワールドワイドの人権活動家。

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(日本語訳 ビルマ情報ネットワーク)