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懸念をかきたてるビルマの援助要請
2008年5月23日配信 ワシントン・ポスト

懸念をかきたてるビルマの援助要請
グレン・ケスラー
ワシントン・ポスト専属記者
2008年5月23日金曜日; ページA12

 ビルマ(ミャンマー)最大の都市ラングーンで今週末の25日に行われる支援国会合で、ビルマ軍事政権は最高117億ドル(1兆1700億円)の復興支援を求めようとしている。この動きに対し、人権活動家と西側諸国は、孤立政策をとる軍政にとって、サイクロン・ナルギスが外交・財政面で思いがけない利益をもたらす可能性を危惧している。

 ビルマの国内総生産(GDP)はわずか150億ドル(1兆5千億円)であり、同国政府当局者は損害額の算定根拠を明らかにしていない。他方で現在もなお、5月2~3日のサイクロン襲来による250万人の被災者のうち4分の3もの人々が、援助を受けとることができずにいる。

 だが人口約5500万人の同国は、天然資源に恵まれており、中国や日本、インド、タイなどアジアの主要国が長年同国へのアクセスと影響力の強化を競ってきた。一方、アジア開発銀行と世界銀行(両行は数十年に渡り対ビルマ融資を停止中)などの国際金融機関は今週声明を発表し、復興支援の形で対ビルマ援助が再開される可能性を示唆している。

 今回の会合は、国連とASEAN(東南アジア諸国連合)が主催して日曜日の25日に開催されるが、この日でノーベル平和賞受賞者アウンサンスーチーの自宅監禁は期限切れになる。ビルマ国軍は、スーチー氏が書記長を務める国民民主連盟(NLD)が大勝した1990年総選挙の結果をこれまで認めておらず、今回も(2003年の自宅軟禁措置が始まってからの)過去5年間に毎年行ってきたように、氏の拘束を延長すると見られている。

 「軍事政権は、ASEANと国連を巧みに使い、主要国同士の間で援助拠出額を競わせている。今週末の会議は『本当の意味でのターニング・ポイント』になるかもしれない」。マイケル・J・グリーン博士(戦略国際問題研究所(CSIS)上級顧問・日本部長、2006年までホワイト・ハウス国家安全保障会議上級部長を務める)はこのように述べた。

 英国のデービッド・ミリバンド外相は、今週のインタビューで、こうしたリスクのあることを認め、次のように述べた。「私たちは、今回の会合を、ビルマ政府が自らの政治的立場を立て直し、または補強するはずみとなるような機会にはさせない」。

 ビルマの財政状況は著しく不透明である。国民の大半は大変貧しいものの、専門家筋によれば、軍事政権自体は、天然ガス田がもたらす年間20億ドル(2000億円)の収入で潤っており、外貨準備高は35億ドル(3500億円)に達する。ビルマを専門とするタイの月刊誌「イラワディ」誌の報道によれば、ビルマ政府は先週、43社(多くが国軍と密接に関わる)に対し、復興事業に関する有利な契約を結ばせた。

 ビルマ経済の専門家であるショーン・ターネル教授(豪マッコーリー大学)によれば、ビルマ政府は、同国の為替に関する公定レートと実効レートの間の凄まじいギャップを利用し、天然ガス田による毎月2億ドル(200億円)の収入を隠匿している。同教授によれば、サイクロンがもたらした実際の被害額は30億ドル(3000億円)である。これは国内総生産の20%に相当し、政府の見積もりをはるかに下回る。

 「しかしビルマはお金を必要としていない。現金は不要である。同国が必要としているのは、政府が拒否している当のもの、専門家の知識である。政府に(被害の大きかったイラワディ管区の)デルタを復興する意志があるならば、必要な現金は政府の手元にある」。ターネル教授はこう指摘する。

 ブッシュ政権は、今回の会合にビルマ駐在の高級外交官を派遣する予定であり、同盟国に対しては、第一に援助物資の被災地への自由な搬入を許可するよう、ビルマ政府を説得することで足並みを揃えるよう求めている。米国国際開発庁(USAID)によると、米国は2040万ドル(20億4千万円)の援助を行った。この米国からの援助額を含めると、国連の緊急アピールによる援助額は1億1000万ドル(110億円)に上っており、この他に、まだ実行されていないが1億1000万ドル(110億円)の支援が約束されている。

 「私たちの立場は単純明快だ。私たちは、今回のサイクロンはまだ人道救援が必要な段階にあり、復興段階には達していない天災だと考えている」。ホワイト・ハウスのゴードン・ジョンドロー報道官はこう述べた上で「わが国の政策担当者は英国、フランス、日本など同盟国とすでに接触し、この点に理解を求めている」と付け加えた。

 グリーン氏によれば、日本政府は、相当な額の支援表明を望む官僚と、ビルマの劣悪な人権状況を踏まえ、慎重な構えを崩さない官僚に分かれている。長年のライバルである中国が、四川大地震によって生じた自国内の人道危機の対応に追われ、ビルマからは手を引き気味だ。同氏は「日本政府は、ビルマ問題で大きな役割を果たせるチャンスと捉えているのかもしれない」と述べる。

 日本大使館職員は22日、同国政府はハイレベルの政治家(政務官と思われる)を会合に出席させるとし、「わが国の最優先事項」は日本がすでに支援表明している1千万ドル(10億円)の緊急人道・救援活動援助の実施であると付け加えた。

 外交筋によれば、欧米の政府当局者の間には、ビルマの復興事業にいかなる形であれ世界銀行が関与することに反対する機運が高まっている。世銀は1987年以降、対ビルマ直接支援を停止しているが、(ビルマと同様に)債務を滞納していたハイチやリベリアなどに無償資金協力を行っている。世銀幹部は22日、ビルマ政府はまず、受け入れ可能な復興計画の策定に関してドナー側と緊密に協議しなければならないと述べた。

 「国際社会全体が、そこには本行も含まれるが、(ビルマへの)長期復興支援を行うことになる場合には、同国政府が、ASEANが主導する国際社会のパートナーと協働し、損害に関する完全なアセスメントを実施し、困窮する人々への支援にフォーカスした復興計画を策定すること、そして援助が適切に使われていることを証明する必要がある」。サラ・クリフ世界銀行東アジア大洋州地域戦略・業務担当局長はインタビューでこのように述べた。

 アジア開発銀行(日本は最大の出資国)は21日、復興アセスメント後に「追加支援策が検討されるかもしれない」と述べた。専門家筋には、東南アジアの大メコン圏(GMS)の開発促進を目的とする既存のプログラムを通して、援助が行われるのではないかとの見方がある。