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国際社会

ビルマ情勢に関する声明
2003年6月3日配信 マケイン上院議員(アリゾナ州選出、共和党)

ビルマ情勢に関する声明
マケイン上院議員(アリゾナ州選出、共和党)
2003年6月3日

 大統領閣下。時折、国際関係の動きの中で、ある紛争の重要性や、自由の原則のために命をかけている人たちを支える倫理的な義務をはっきりと認識させられる瞬間があります。先週末、ビルマの民主化指導者アウンサンスーチー氏と氏の支持者らが暴力で弾圧されたことは、ビルマの独裁政権がいかに残虐で以前と変わらないものであるかを裏付けるものです。今回の襲撃事件は、抑圧的な軍政によって長い間許されなかったビルマ国民に、人権や自由をもたらそうとするスーチー氏のたたかいを積極的に支えなければならないことを、世界中の民主主義者に思い出させるものでした。

 アウンサンスーチー氏と氏の支持者に組織的な武装攻撃が行われ、氏が逮捕されたことで、世界はビルマ軍政が正当性を持たず、平和的な反対勢力を容赦なく押しつぶす政権であることに気づきました。軍政は、スーチー氏の率いる国民民主連盟(NLD)の党員と、NLDに反対する正体不明の者らが衝突し暴力沙汰になったので、秩序を回復するために介入したと言い張っています。実際には、軍政の翼賛組織がもう何か月も、スーチー氏とNLDに対して妨害行為を加えていました。軍政の大衆翼賛組織である連邦団結発展協会(USDA)が先週末の襲撃を指揮、実行し、スーチー氏支持者が少なくとも70人殺され、スーチー氏自身もけがをしました。重傷である可能性もあります。軍政の暴漢たちはスーチー氏個人を標的にしていたとの信頼できる情報も寄せられています。氏は現在、軍の情報局によって拘束されており、外部と連絡を取ることができません。NLDの事務所は閉鎖され、多くの党員が行方不明になっています。大学も閉鎖されました。この14年間のほとんどを自宅軟禁ですごしたスーチー氏は、またもや政治囚となっているのです。

 アウンサンスーチー氏は、自由を求めてたたかう者としては世界でももっとも勇気のある1人です。私は自由なビルマを提唱する世界中の人たちと共に、スーチー氏の不当な拘束とに怒りを表明し、即時かつ無条件で氏を解放すること、そしてビルマ国内を自由に旅行し遊説する自由を求めます。

 NLDの事務所を閉鎖し、大学を封鎖し、アウンサンスーチー氏とNLD幹部らを「保護のため」と称して拘束することは、軍政がいかに国民からかけ離れているか、そして13年前に行われた民主的な選挙でスーチー氏を圧倒的に支持した国民にとって、スーチー氏が呼びかける民主化改革がいかに説得力を持つものであるかを示すものです。一年前に氏を自宅軟禁から解放し、厳しい制限つきながら遊説を許可したことは、軍政がスーチー氏の人気が落ち、氏の闘争心も衰えたと計算してのことだったようです。それは非常に大きな思い違いでした。

 アウンサンスーチーは今でも、正当に選出された、圧倒的な人気のあるビルマの指導者なのです。当時自宅軟禁下にあったにもかかわらず、1990年の総選挙で氏の政党NLDは82%の票を獲得し、軍政に衝撃を与えました。NLDに投票した大多数のビルマ国民も、国際社会も、ビルマ軍政が選挙結果を無視したこと、その2年前に国軍が民主化運動に参加していた人たちを虐殺したことを忘れてはいません。ビルマの監獄にいまだに囚われている多くの政治囚のことや、ビルマ国民が何十年も抑圧に耐えてきたことを、私たちは忘れていません。先週末に起きた、ビルマの自由な政治的未来に対する軍政の襲撃で、私たちは既に知っていることを再認識させられました。つまり、軍政は今もビルマ国民の自由と繁栄に対する最大の障害物であるため、ビルマの改革や開放を指揮することはできない、ということです。ビルマは軍政が制約を受けず、罪悪感もなく政権にある限り、変わることはできません。

 このような明らかな真実を今週再び認識させられたにもかかわらず、軍政と政治的、商業的に関与していく政策を取り続けようとする国があります。軍政とともに、また軍政を通して働きかける方が、軍政を孤立させ制裁するよりも自由化に貢献するというのがその理由です。ASEANは1997年にビルマの加盟を認め、中国政府も軍政と友好関係にあり、ほとんどの国家がビルマと貿易をしています。米国とヨーロッパだけが軍政に対して軽い制裁を課しています。関与政策の支持者は、アウンサンスーチー氏と軍政との対話の開始や、2002年5月に氏が自宅軟禁から解放されたことを挙げ、外部からの影響力が独裁政権に良い効果をもたらしている可能性があるとしました。しかし先週末の民主化勢力への襲撃の後では、そうしたものがあるとはほとんど言えません。

 アウンサンスーチー氏とNLDに残虐な攻撃を行ったビルマ軍政は、今後はこれまでと同じ調子ではいかなくなることを、非常に明確に理解しなければなりません。国際社会にとっては今こそが、現状維持がビルマ政府だけを利するものであることを自覚するべき時なのです。ビルマ国民は苦しみを味わい、近隣国は厄介な事態に巻き込まれ、企業は自由で発展へと向かうビルマと行うはずのビジネスを行えず、麻薬王は統治の空白に付け入って繁栄し、軍政の誤った国家運営によって国民が先鋭化し窮乏化するにつれ、ビルマ国内の情勢は不安定さを増しています。

 どのような国家や指導者であれ、ビルマ国民の福祉、地域の安定と繁栄への強い欲求に、あるいは国際社会の中でのビルマが占める立場への懸念からつき動かされているならば、軍事政権による支配がこうした利益に資するものだなどと主張することはできません。軍政はビルマの歴史の針を無理やり元に戻そうとしている中で、軍政を擁護する民主主義国家があるなどということを、私はとうてい信じることができません。しかし今日の朝、週末に起きた襲撃事件への意見を求められた日本の外務大臣は、ビルマ情勢が悪化しているとの見方を否定し、民主化に向けた進展があると述べ、日本としては対ビルマ政策を変更する考えのないことを明らかにしました(注:「日本外務省のアウンサンスーチー氏拘束に関する見解」を参照)。軍政にとっては、おそらく、耳障りのいい発言です。しかし私は、ビルマ国民の友人であろうとするならば、聞こえのいい言葉を吐いていては悪化するだけの問題に対して、まったく別の、理に適ったアプローチを取るべき義務があると考えます。

 ビルマが破滅に向かって進んでおり、世界にはこれを座視することは許されません。自由を求めるビルマの指導者や支持者は、抑圧とのたたかい中で、どの国が自分たちの側につき、どの国が自分たちを抑圧する側についたのかを今後とも忘れないでしょう。

 米国と国際社会のビルマ政策は、抑圧と不処罰は終結させるべきだという信念、そして軍政は、最終的に自由で公正な総選挙に到達する、決して後戻りさせることのできない政治面での指導的役割をアウンサンスーチー氏にもたらす、対話を通した和解を目指す義務があるという信念を反映したものでなければなりません。もし軍政がこうした歩み寄りを見せなければ、ビルマの現政権は民政移管に、それが実現した暁には、対処することはできないでしょう。なぜなら彼らの同意がないままに政権移管が行われることになるからです。

 米国はビルマ政府関係者へのビザ発給停止措置を直ちに拡大し、スーチー氏一行に対する今回の襲撃を組織した連邦団結発展協会のメンバー全員にも適用するべきだと考えます。政府はまた、ビルマ軍政指導部の米国内での資産凍結に関する行政命令をただちに発行すべきです。国連のラザリ・イスマイル特使は、アウンサンスーチーとの会見を保証するとの言質を軍政から取れない限り、今週(6月6日に)予定されているビルマ訪問を行うべきではありません。

 連邦議会はビルマ製品の米国への輸入禁止を定めた法律の制定を直ちに検討するべきであり、一方で政府は欧州連合(EU)に対し、こうした方向を目指す具体的な措置とともに、人権へのコミットメントを強化するよう働きかけるべきです。ビルマの米国とEU向け輸出を合わせれば同国の輸出高の5割を上回るのであり、したがってビルマ政府に大きな影響力を行使することができるのです。米国だけでもビルマからの輸出の20%から25%を吸収しています。米国がビルマ製品の輸入禁止措置を検討すれば、ビルマの国民と彼らによって選ばれた指導者へのはなはだしい人権侵害がどのような結果をもたらすのかに、ビルマ政府の意識を向けさせることに必ずや貢献するでしょう。米国が新たなイニシアチブを発揮することで、懲罰的な貿易制裁措置に向けたEUの動きは、ビルマ政府が抑圧的な措置を続けることを、不可能にするまではいかないとしても、困難なものにはしていくでしょう。

 今回の軍政の一連の行動は、ビルマとアジア全体に存在する、押しとどめることのできない自由への流れを失速させようという腐敗した政権の必死の試みです。しかし彼らは必ず敗北します。そして自由なビルマを求めるアウンサンスーチーのたたかいはいつの日か必ず勝利するのです。(訳、秋元 由紀+箱田 徹)

(訳、秋元 由紀+箱田 徹)

出典:John McCain: McCain Calls an End to "Business as Usual" following Attack on Suu Kyi (3rd June, 2003)