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国際社会

ビルマと北朝鮮の危険な急接近:軍事関係強化に各国懸念
2003年11月20日配信 ファーイースタン・エコノミック・レビュー

ビルマと北朝鮮の危険な急接近:軍事関係強化に各国懸念
ファーイースタン・エコノミック・レビュー
2003年11月20日号
バーティル・リントナー、ショーン・クリスピン

 北朝鮮とビルマ(ミャンマー)の軍事政権との軍事的関係が強まっているらしいことに、米国やアジア諸国の安全保障関係者らが懸念している。ラングーンとバンコクに駐在する外交官らは、ここ数ヵ月の間に朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)がビルマに新しい武器を供給している、またはする計画があることを示す新たな徴候を感知したと述べる。武器はヘロインとの交換で提供されている可能性もあるという。

 この他の新展開として、米国とアジア諸国の政府関係者らは、ビルマが北朝鮮から多数の地対地ミサイルを購入する交渉を始めたと考えている。ラングーン近郊のモンキー・ポイント海軍基地では約20人の北朝鮮人技術者が働いているが、駐ラングーンの外交官らによれば、この技術者たちはビルマ海軍の軍艦にミサイルを搭載する準備をしている可能性がある。外交官らはまた、現地からの偵察情報として、技術者がラングーン郊外にあるビルマ防衛省のゲストハウスに泊まっていると述べている。

 駐ラングーンのアジア諸国の外交官らはさらに懸念すべき点として、北朝鮮の技術者がミョティッで列車から建設用重機や大きな木箱を降ろしているところが諜報員に目撃されているとする。外交官らはこのミョティッが、ビルマ軍政が研究用原子炉を建てようとしているビルマ中部の町ナッマウにもっとも近い駅であると指摘する。北朝鮮の国営高麗航空の飛行機がビルマ中部の軍用飛行場に着陸するのも目撃されている。

 特に懸念されるのは、このような軍事協力の情報が、両国に対する米国の政治的圧力が強まる中で出てきたことである。米国は北朝鮮に対しては核開発の停止を、ビルマに対しては反政府勢力との真の対話の開始を求めて圧力をかけている。識者によると、追い詰められた問題国家同士が同盟を組むのは地域内外の脅威となりうる。片方が輸出可能な核兵器技術を所持しているかもしれない場合は特にそうだ。

 核拡散の食い止めに力を注いでいる米国は明らかに気をもんでいる。米行政府の高官はこう述べる。「北朝鮮のような政権が…大量破壊兵器(WMD)の販売を外貨取得のためのうまい手段にしか考えていないことは明白だ。さらに、輸出先はごく自然に限られてくる。つまり、テロリスト集団、ならず者国家、問題国家くらいしかない。WMDを最終的にどこに売るにしろ、この動きは問題であり、われわれはこの動きを制限、制御する措置を取ろうとしている」

 ビルマと北朝鮮の軍事関係強化はまた、朝鮮大聖貿易総会社の代表団のビルマ訪問とも機を同じくする、と同社のビルマ国内での活動を詳述した文書を読んだ駐ラングーンの外交官らは述べる。この企業は朝鮮労働党の外貨資金集めを行う特殊機関「39号室」の傘下にあり、関連会社が機密のミサイル技術を輸出してきたことが記録に残っている。北朝鮮は以前、核兵器開発プログラム用の二重目的技術を購入・輸入するために同社の関連会社を使ったことがある。その関連会社の一つ、蒼光信用会社について、米国国務省は1990年代にパキスタンの核兵器開発プログラムで主要な役割を果たしたとし、ミサイル関連科学技術の同国に売ったのを理由に98年と01年に同社に制裁を課している。

 ビルマが北朝鮮に近寄ったのは、特にイラク戦争の後、米国から攻撃を受けるのではないかと恐れていることに関係していると外交官らは考えている。本誌が入手した米国国務省の最近の機密扱いの報告書は、北朝鮮が「小型兵器、弾薬、大砲、ミサイル」をビルマに供給しているのを懸念している。ナッマウでの北朝鮮人の動きや大聖貿易総会社には触れていない。しかし米国上院の上級補佐官は、上院外務委員会がナッマウでの動きを監視していると述べる。

 同委員会の委員長を務めるリチャード・ルーガー上院議員は本誌へのコメントの中で次のように述べた。「ビルマと北朝鮮という問題国家同士の関係強化は、心配の種以外の何ものでもない」。ビルマが北朝鮮から武器の供給を受けているとの国務省報告を受け、同議員はこう警告した。「この展開は、アジアの安全と安定に対する重大な脅威の種である」

 ビルマ軍政報道官フラミン大佐はビルマと北朝鮮の軍事関係が強まっているとの報道に対し、北朝鮮が原子炉の建設に関わっているとの報告に特に触れながら「憶測だ」と退けた。本誌がファクスで送った質問への返答の中で氏は「多党制民主主義と開かれた市場経済への移行」のために「すべての力と手段を尽くさなければならないこの時期に、わが国がどうしてWMDの開発をしようとするだろうか」と述べた。氏は、北朝鮮からのミサイル購入があったかについては返答しなかった。北朝鮮関係者からはコメントを得られなかった。

 ビルマの軍事的な動きへの懸念から、少なくとも隣国の一つが対抗手段に出た。10月末、タイは米国から中距離空対空ミサイルを不特定数購入した。テロの脅威から身を守るという名目だったが、軍事アナリストらによれば、防衛体勢を強化するためである可能性の方が強い。ビルマは2002年にロシアからミグ29戦闘機を数機購入した。アナリストらは、これはタイが米国からF18戦闘機を購入したのに対抗するために動きだったと見る。

 7月に新しく厳しい制裁を課すなどしている米国のほかにも、ビルマは東南アジア諸国連合(ASEAN)同盟国からも、民主化指導者アウンサンスーチー氏との政治対話を再開せよとの圧力を珍しく受けている。中国も最近になって、ビルマ軍政に対する絶大な軍事・経済支援を弱め始めている。

考え方の似通る両国

 外交官や地域安全保障の専門家らは、ビルマが孤立を深めるにつれ、軍政は政権を維持し、特に米国から感じ取られる脅威を緩和するための新しい方法を探し出そうとしている。例えば、駐ラングーンの外交官らによるとビルマ軍は、ビルマ中部の町タウンドゥインジーにミグ戦闘機を米国の攻撃から守るための巨大な格納庫を建設している。駐バンコクのある西側外交官はこう述べる。「北朝鮮とビルマとは似たような考え方をしている。両国とも自己防衛のために守りを張り巡らしている。ビルマの将軍たちは、北朝鮮が米国に対し物怖じしないのを賞賛し、自分たちも同じようにできたらいいと思っているが、ビルマには北朝鮮のような交渉力がない」

 このことが、ビルマが北朝鮮から破壊力のある武器をさらに購入するのではないか、と一部の安保関係者が恐れる結果につながっている。関係者らは特に、ナッマウ付近での動きを詳しく調べている。2002年にロシアは、ビルマと医療用原子炉の売却と建設、運用への支援で合意した。しかしビルマ軍政が支払い不能になったため、ロシアは03年初めにこの事業を中断した。

 今、タイ軍の諜報筋と関係のある西側およびアジア諸国の外交官や地域安保アナリストたちの中には、ビルマ軍政の原子炉建設再開を北朝鮮が手伝おうとしているのではないかとする向きもある。最近ビルマを訪れた駐バンコクの西側外交官は「われわれはナッマウでの動きを非常に注意深く見守っている」と述べた。外貨不足で貧困に悩むビルマが、北朝鮮からの軍事物資や援助の対価をどう支払っているのかは明らかでないが、麻薬で払っているのではないかとする西側の安保関係者もいる。例えばある米国政府高官は、ビルマと北朝鮮が最近、ビルマがミサイルや、場合によっては核技術を得る代償として高級ヘロインを北朝鮮に供給するという合意を結んだのではないかとしている。

 政府関係者たちはこのような推測を裏付けることとして、2002年以来少なくとも2隻の北朝鮮船が、ビルマ産「ダブルU-Oグローブ」印ヘロインを台湾とオーストラリアに密輸していたとされると指摘する。また報道によれば、ロシアの警察は最近北朝鮮との国境上で、北朝鮮の諜報員が所持していたビルマ産ヘロインを押収した。ワシントンの米国政府高官は、最近ビルマのアヘン生産地域「黄金の三角地帯」で北朝鮮の諜報員が目撃されたことを引き合いに出し、「われわれは両国が麻薬密輸の面で協力しているのではないかと強く疑っている」と述べた。(訳・秋元由紀)

出典:"Dangerous Bedfellows", by Bertil Lintner and Shawn Crispin, Far Eastern Economic Review, 20 Nov. 2003.R[-32]C