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国際社会

ビルマのために行動せよ
2004年4月27日配信 ワシントン・ポスト

ビルマのために行動せよ
ジョン・マケイン、マデリン・オルブライト
ワシントン・ポスト
2004年4月27日

 「組織的な人権侵害を前に無関心でいるのは非道徳というものだ。正義と自由とを支持しないということは、不正義と屈服とを支持するのと同じことなのである」とは、ノーベル平和賞受賞者でアパルトヘイト反対運動指導者の南アフリカのツツ大司教の言葉だ。大司教は、圧制の下で人間の自由を求めてたたかうことがどんなに大変かをよく知っている。

 世界の諸民主主義国家は、正義と自由を推進するという共通の道徳的義務を負っている。この義務がビルマほどの深刻さを持つところは他にほとんどない。ビルマはタンシュエ将軍が率いる暴漢たちが政権を握っており、暴力と恐怖によって統治されている。ビルマの軍事政権は野放しの抑圧政治を行ってきた。反体制活動家を殺し、子ども兵士や強制労働を使い、強かんを武器として用いてきた。約1年前には、民主化指導者のアウンサンスーチー氏と、氏の支持者数百人に対して組織的な襲撃を行った。ビルマには千人以上の政治囚がおり、その中には選挙で選ばれた議員も含まれる。軍政は最近、国際労働機関(ILO)の職員と接触したという理由で3人の市民に死刑判決を言い渡した。

 ビルマ軍政は、周辺国からのシニカルな支援を得ながら「民主化へのロードマップ」を発表した。5月に開催が予定されている制憲会議がロードマップの出発点とされているが、この会議の指導権は軍政が全面的に握っている。スーチー氏率いる国民民主連盟(NLD)の会議への実質的な参加や、政治体制の移行に向けた動きの日程、政治囚の解放、民主的に選ばれた指導者への権力移譲の保証などは一切提示されていない。軍政側の提案事項はむしろ、さらなる制裁を免れるために西側諸国の最低限の期待だけに沿いつつ、見せかけの文民政権を創りだすことによって軍事支配を制度化するように工夫されているように見える。

 軍政の最近の行為を見ると、長年にわたる関与政策と寛容な態度によって独裁政権がより人道的で理性的になり、反政府勢力との和解を検討するようになったとはいえないことがわかる。それどころか、軍政が民主化勢力との政治的和解に向けて微小とはいえ動きを取ったのは、国際的な圧力があったからにほからならない。教訓は明らかだ。世界の民主主義国家とビルマの周辺諸国は、軍政が民主化への逆行不能な移行の交渉をする席につくまで、圧力をかけ続けなければならない。

 ビルマの民主化指導者たちが、政権を担う正当性や権威を備え、責任を持って取り組もうとしていることに疑いの余地はない。しかし他方で、ビルマ民主化に向けた国際社会の責任ある支援体制は不安定なままだ。西側の民主主義国家と周辺諸国は、ビルマの民主化指導者らを支えるために、ただちに3つのステップを踏むべきである。

 第一に、米議会は2003年7月に発効したビルマからの輸入禁止措置をただちに更新し、大統領はそれに署名するべきだ。この制裁措置は、4月30日から始まる検討期間の後に失効することになっているが、NLDの支持を受けている。制裁によって、軍政が国外の財産を利用したり、旅行したり、貿易によって歳入を得たりするのがより困難になっている。欧州連合(EU)の加入国は人権保護に強い関心を持ち、貿易と経済援助とを通じて東南アジアで重大な力を持っている。そのEUは、4月29日に新しいコモン・ポジション(対ビルマ政策)を発表する予定である。EUはその中に、軍政に対する制裁措置を盛り込むべきである。

 第二に、欧米諸国はアジア諸国からの支持を得つつ、軍政に対し、国連人権委員会と国連総会それぞれの決議の内容を直ちに履行するよう強く促すべきである。決議には、民主主義、法の支配、人権の尊重などが含まれている。欧米諸国はまた、ビルマ民主化問題を国連安保理の正式な議事とし、民主化に向けた実質的な努力を始めなければ確実に制裁措置を取るという決議の採択に向けて緊急に行動するべきである。

 第三に、中国、タイ、インドなど、軍政の犯罪的行為に対して厳しい態度を取りたがらない国々は、ビルマについてあいまいで、妨害となるような外交をするのであれば、西側民主主義国家との広い意味での二国間関係に深刻な影響が及ぶことを理解しなければならない。特にタイは、楽観的にも「ビルマの民主化に向けた進展」と呼ぶものを話し合うために国際会議(バンコク・プロセス)を開こうとしているが、このことを念頭に置くべきである。 

 これら3つのステップのほかに、米国、欧州、そしてアジア諸国はアウンサンスーチー氏ら政治囚の無条件解放を求めるべきである。ただし、解放を要求すると同時に、解放だけでは不十分であることを明確にする必要がある。さらに、自由で公平に行われた1990年総選挙の結果を反映する政治的和解をも継続して求めていかなければならない。この政治的和解においてNLDは、中心的、決定的な役割を与えられるべきである。

 昔、ヴァーツラフ・ハヴェルという反体制派劇作家が、恐怖と暴力とによる統治を乗り越えるために、「権力のない者の権力」について書いた。人間の自由におけるそのような革命が不可能だと思われていた時代にだ。今日、国際社会はビルマ国内の非権力者が専制政治の束縛を解き放つのを助ける力を持っている。この道徳的責任を果たすときが来た。今こそ行動しなければならない。(訳、秋元由紀)

注:ジョン・マケインは米上院議員(共和党、アリゾナ州選出)。マデリン・オルブライトはクリントン政権下の1996年から2001年まで国務長官を務めた。

出典: 'A Need to Act on Burma,' The Washington Post, 27 April 2004