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国際社会

ビルマ軍事政権主催「世界仏教サミット」に関する声明
2004年11月28日配信 日本ビルマ問題を考える会ほか

2004年11月28日

賛同団体(ABC順):
日本ビルマ問題を考える会
政治囚支援協会(ビルマ)
日本ビルマ救援センター
ビルマ民主化同盟
国民民主連盟(解放地域)日本支部
ビルマ市民フォーラム

 ビルマ軍事政権(国家平和開発評議会、SPDC)は、2004年12月9日~11日に「世界仏教サミット」を行うと発表しています。私たちはビルマ軍政にはこうした会議を行う資格がないと考えます。ビルマ全土での組織的な人権侵害は仏教の根本原則に反するものです。他方で政治と仏教を結びつける今回の動きには、政権のイメージアップのために仏教を利用する軍政のやり方をはっきりと表れています。同時に国民和解の今後を占う重要な時期であるにも関わらず、ビルマ軍政が、非ビルマ民族に多い非仏教徒への配慮がいかに欠けているかも示しています。私たちは軍政にこの会議を中止するよう求めます。

 会議は当初「第4回世界仏教徒サミット」という名称で、日本のある団体をスポンサーとして計画されていました。私たちは一連の動きを注意深く見守っていましたが、この団体は10月末に撤退の意思を軍政側に通達しました。詳しい理由は依然不明です。しかしビルマ側のパートナーがキンニュン前首相であったため、一連の粛清劇が大きな原因であったと伝えられています。スポンサー不在となった会議は開催そのものが危ぶまれました。
 しかし軍政はすぐに自力開催に切り替え、スポンサー側が「第4回」の名称を使わないよう求めると、名称を「世界仏教徒サミット」に変更しました。そして撤退の連絡を受けた1週間後の11月上旬には、品川のビルマ大使館を通じて、日本の仏教諸教団の全国組織である全日本仏教会に協力の要請を行っています。全日仏はこの申し出をはっきりと断っています。
 ビルマ宗務省は40カ国から2500人の代表団が参加すると宣伝しています。しかし今のところ参加登録したのは12の代表団に過ぎず、したがって参加人数も激減すると見られています。会議招致のそもそもの目的は観光振興だったことを考えれば、一連の騒動は軍政への大きな打撃となっています。

 ところでここで確認しておきたいことがあります。ビルマ軍事政権には統治の正統性がないということです。軍政は政権移譲に応じず、民主化勢力を弾圧し、国民民主連盟(NLD)のアウンサンスーチー書記長ら1400人余りの政治囚を拘束しています。また非ビルマ民族への焦土作戦を50年以上に渡って続け、殺人、処刑、強かん、拷問、強制移住、強制労働、強制失踪、略奪、文化や言語の破壊など非道の限りを尽くしています。失敗続きの経済運営によって、国民の生活水準は大きく下落し、企業活動や労働者の意欲は低下しています。その一方で貧富の差は拡大し続けています。教育制度は度重なる大学閉鎖によって悲惨な状況に陥っています。ビルマは軍事政権によって破壊され続けているのです。

 こうした軍事政権が「仏教サミット」を開く資格が果たしてあるのでしょうか。私たちは以下の理由から、その資格はないと考えます。今回の仏教会議は中止されるべきです。

民族間対立の一因 世俗国家の原則と矛盾する仏教優遇策
 独立後のビルマは一貫して世俗国家です。軍政主導の制憲国民会議に提出された憲法草案ですらこの事実を認めています。世俗主義をうたう国家が特定の宗教を優遇、または差別することは許されません。軍政は既に多額の国家予算を今回の会議のために支出していると宣伝していますが、こうしたやり方は世俗主義の原則に反しており、会議が組織されることがそもそも誤りです。
 ウー・ヌ以来の歴代政権は、政権の正統化のために、仏教をあからさまに特別扱いしてきました。一連の政策は、非ビルマ民族に多いムスリム、キリスト教など非仏教徒を日常生活のレベルで圧迫するとともに、民族間対立を激化させる大きな原因となってきました。軍政が国民和解を推進すると称するならば、仏教優遇政策と他宗教への迫害政策を直ちに停止するべきです。

軍政による非仏教徒の組織的な弾圧
 軍政は仏教を政権の正統化根拠として利用するだけでなく、非ビルマ民族を弾圧する手段としても用いています。米国国務省発行の「信教の自由に関する年次報告書」によれば、非仏教徒の宗教活動は、施設の建築から印刷物の出版、宣教、信者の集まり、施設での礼拝に至るまで、厳重な監視と頻繁な妨害の対象となっています。軍政はまた、非仏教徒を仏教徒に改宗させるプロジェクトをチン州で行っているとの報告もあります。こうした露骨な宗教差別を行う政権が語る宗教や平和とは、自らの政権を維持するための欺瞞的な身振りに他なりません。

軍政の徹底的な仏教管理政策 仏教の持つ潜在的な力への強い恐怖心
 軍政は仏教の庇護者を標榜してきました。国営メディアには寺院で積徳行為をする軍政幹部の姿が頻繁に映し出されます。パゴダの寄進などの寄付行為は一種の競争という観もあります。こうした将軍たちの行動は、自らの血塗られたカルマ(業)を清めようとする努力であると同時に、大人しく服従する僧侶への「アメ」でもあるのです。
 しかし見方を変えれば、軍政側のこうした態度は、ビルマ社会に対する僧侶の強い影響力を軍政が強く恐れていること、僧侶がビルマ近現代史で重要な役割を果たしてきたことを、軍政側が無視できないことの表れでもあるのです。実際のところ仏教と僧侶は、独立を求める反英民族運動から1988年の民主化運動まで、歴史の節目ごとに重要な役割を果たしてきました。
 ビルマの仏教徒は全人口の8~9割を占めており、仏教はビルマで支配的な宗教の位置を獲得しています。軍事クーデターによって1962年に成立したネウィン政権以来、仏教と僧侶が持つ民衆への強い影響力は支配者によって常に恐れられてきました。ネウィンは1980年に僧侶登録制の導入に成功し、すべての僧に対して住居を現地当局に届けること、また政府の発行する専用のIDカードを所持することを義務付けました。この法律を用いてネウィン独裁政権は僧侶管理体制を確立しました。現軍政はこの制度を引き継いだだけでなく、僧侶とサンガ(僧団)への統制を更に強化する政策を進めています。
 ビルマでは仏教といえども、自由に宗教を実践することができないのです。軍政は今回の会議は仏の教えの興隆が目的だと宣伝していますが、仏教に対する一連の政策は、この主張と真っ向から矛盾するものです。

300人以上の僧侶を投獄するビルマ軍政
 軍政は自分に敵対するいかなる動きも見逃しません。僧侶への「ムチ」とは、軍政に批判的な宗教者への徹底的な弾圧のことなのです。11月に発表された政治囚支援協会(AAPP)の報告書によれば、現在も300人を超す僧侶が獄中に囚われています。昨年2003年だけでも100人の僧が投獄されているのです。
 この中には、横暴な軍政を戒めるために、政府や軍の人間からの施物を拒否し、儀礼や説法など一切のサービスも行わないという「さかさ鉢」と呼ばれるボイコットの参加者が多数含まれています。これは仏典に記されている正当な宗教行為で、道を外れた信徒に仏の教えへの復帰を促す、僧侶からの慈悲の行為と位置づけられています。
 しかし軍事政権側は、この信仰心に支えられた行動を自らへの戒めとしてではなく、敵対行為としてしか捉えることができないのです。このこと一つを取ってみても、軍政幹部が仏の教えを理解していないことは明確です。こうした人々が仏の教えの普及を目指す会議を開くことは、非常に大きな欺瞞なのです。

軍事政権は宗教迫害を停止し、僧侶を始めすべての聖職者を解放せよ
 私たちはビルマ軍事政権=国家平和開発評議会による抑圧的な宗教政策を強く批判します。そして心ある仏教諸団体に対して、今回の「世界仏教サミット」の欺瞞的な性格を理解していただきたいと考えています。もし軍事政権に信心のかけらがあるのなら、このようなサミットは中止すべきです。ビルマでは僧侶を始め、様々な宗教の聖職者が信教の自由の権利を行使しようとしたために逮捕され、投獄されています。軍政はすべての聖職者を全国の刑務所と強制労働キャンプから解放すべきです。