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社会

ビルマの麻薬社会
2001年8月1日配信 イラワディ誌

麻薬生産は、かつてはビルマ政府と闘っていた反乱軍が占有していた。しかし今や、ビルマ経済の主流となっていると同時に、隣国の禍の種にもなっている。

  5月に行われた国連薬物統制計画(UNDCP)主催による3日間の麻薬会議の後、ビルマ(ミャンマー)当局は、不法な麻薬取引を撲滅するために真面目な努力をしているとの印象を、やっとのことで諸外国の政府とマスコミに与えることができた。
  アジアの外交官とビルマ政府高官が見守る中で、北アメリカに持ち込めばほぼ市価10億ドルに匹敵するアヘン、ヘロイン、そしてアンフェタミンが炎につつまれた。
  しかし、チョーイェ(35歳)は、このことにはまったく驚くこともせず、関心を示さなかった。タイのビルマ国境にある小さな家で、座ったままビルマ葉巻を吸いながら、雲南省出身のこの中国人は微笑んだ。
  そして、彼は怒声を発した。
  「ビルマ人は、とても賢いということを知っているかね」
  私はうなずいて、次の言葉を待った。
  「彼らは、他の人々から盗まない。自分自身から盗む」
  簡単な説明を終えた彼は休止し、また葉巻を吸い始めた。
  チョーイェの短いコメントが、ラングーンでの最近の麻薬焼却ショーのすべてを説明している。没収された麻薬を焼却するこのショーは、カンボジア、中国、ラオス、ビルマ、タイ、ベトナムでの麻薬撲滅のために開かれた地域ミーティングに間に合うように設定されたものであった。
  麻薬焼却ショーは、現在ASEANのメンバーになったビルマの評判のセレモニーになっている。危険な薬物を処分するという十分効果的な広報手段である。ビルマは、すでに十回以上こうしたイベントを開いている。
  おそらく、ASEAN諸国とUNDCPの代表は、このイベントを目撃して喜んだであろう。しかし、シャン州北部から最近やって来たチョーイェにとっては、麻薬焼却ショーは、現在国家平和発展評議会(SPDC)として知られている支配政権が行なう、単なるみせかけの広報に過ぎない。
 

  なぜか? チョーイェは、その答えを知っている。
  昨年、彼はシャン州北部のタンヤン地域にいた。現在、この地域は、支配政権と停戦協定を結んだ少数民族武装勢力によって支配されている。彼らは、アヘンを栽培し、麻薬工場の保有を許されている。チョーイェは、タンヤンでは4エーカーのアヘン農地を借りた。彼は、アヘンを栽培するのに先立って、地元のビルマ軍大隊に自分の名前、住所を登録し、収穫後、アヘン税を支払う約束をした。
  「そこでは、すべてが自由だ」
  チョーイェは、ひどい中国訛りのビルマ語で話した。
  彼は4人の農民を雇っていたが、他の農地ではケシ栽培作業のために50人から80人も雇っており、チョーイェのものより10倍、大きい農地の所有者が何人かいた。もちろん、彼らの農地は、より豊かな土地であり、
  「30エーカーから40エーカーを所有している者もいる」とチョーイェは話している。
  ビルマへ来る前に、チョーイェは、瑞麗(ルイリ=中国の国境の町)でビルマ語を学んだ。彼の計画は、ビルマで財産を成すことだった。
  「ビルマに来て以来、私のビジネスのすべては違法なものだった。」
  彼は一人ではなかった。雲南地方の中国人の友人が、シャン州北部からやって来た。ビルマに入ることは、それほど難しくない。
  「3万チャットを払えば身分証明書を手に入れることができる」
  チョーイェは、15年前にビルマにやって来て以来、30枚もの異なる身分証明書を取ったと語る。
 
  20歳のとき、彼は地元の麻薬売買に加わり、シャン州北部でシャン人武装勢力グループの友人を作った。この冒険的なビジネスは1990年に開始された。軍事政権がラングーンで血のクーデターを行って2年後のことであった。
  自動攻撃ライフルを所持しながら、中国人、シャン人の80人のグループが、ヘロインを運ぶためにシャン州北部からインド国境まで歩いた。チョーイェも、その一人だった。「われわれは、40頭のラバで、およそ900キロのヘロインを運んだ」
  インドとの国境に至るまで3ヵ月かかった。過酷なジャングル旅行であった。時々、ヘロインを奪おうとする正体不明の武装グループに遭遇した。
  「われわれは、自分たちの生命を商品のために犠牲にする準備ができていた。彼らに命を取られてもヘロインは渡さない」
  時には、病気になったり、傷ついた仲間たちがジャングルの中に銃とともに置いていかれた。ある場合は、頭に弾丸を打ち込んで、置き去りにするしかないときもあった。いずれにしても、チョーイェは相当な金額を成した。
  「私は、130万チャットを投資して、300万チャットを取り戻した」
  しかし、チョーイェは、他の何人かの雲南の友人のようには幸運でなかった。麻薬ビジネスに手を染めていた人々は、今や、マンダレーとラングーンに家を持っている。彼はこれらの友人の名前を明らかにすることを拒絶した。その友人たちはビルマで現在影響力を持つビジネスマンであり、地域の指揮官や軍当局と親しい関係にある。
 
  現在チョーイェは、対抗する麻薬ギャングによってではなく、ビルマ軍によって追い出され、タイ領域内の一時的な聖域に住んでいる。理由は、彼が地元のビルマ軍部隊にアヘン税を払うことができなかったからである。
  ビルマ軍は彼に対し、ケシ農地の売上から60万チャットを払うよう要求した。しかし、悪天候によって収穫が壊滅状態だった。収穫の良い年には、彼の農地から60ビス(およそ98キロ)を生産することができた。ビスあたり30万チャットと評価された。
  チョーイェは、アヘン税を払うことができない耕作者は逮捕されると言った。
  「たとえ少ししか利益がない場合でも、彼らはやって来てあらゆる手段でアヘン税を徴収する」
  ビルマ軍はアヘンとお金が大好きなのだと、付け加えた。
  昨年の悪天候はチョーイェのアヘンの収穫を破滅させた、したがって、彼は一切の利益を得ることができなかった。何人かの麻薬取締官は、ビルマでのアヘン生産の低下は気象状況によるものであり、撲滅努力によるものではないと述べている。しかしながら、ビルマでのアヘン・ビジネスは、いまだ健在である。
 
  最近のドイツのブレッセ・アヘントゥール紙は、
  「アフガニスタンでは今年始めにケシの収穫が廃棄された。そこで、ビルマは、その怠慢によって世界をリードするアヘンとヘロインの生産者の冠を取り戻した」
  と報告している。以前は、アフガニスタンは世界の最大のヘロイン生産国であった。
  かつて、ビルマの麻薬に対する戦いを賞賛したUNDCP地域代表のサンドロ・カルバーニ氏もまた、麻薬の生産に関してビルマが新世界のリーダーとしての優越性を取り戻したことを認め、
  「アヘン生産に関して、ミャンマー(ビルマ)は再び一番になった」
  と語っている。
  米国の麻薬取締機関は、昨年のビルマのアヘン生産はおよそ1,200トンであったと見積もる。現支配政権が権力を掌握して一年後の1989年以降、ビルマは未加工のアヘンを毎年2,000ないし2,600トン生産している。1970年代の生産量は毎年200トンから400トンの間であった。
  ビルマ当局は、年間アヘン生産の1パーセント未満を横取りしていると見積もられる。残りは、中国またはタイを通して世界市場に密輸出される。
 
  ビルマが世界のアヘン王に返り咲いたことから、チョーイェは、アヘン・ビジネスに戻ることを切望している。
  「私は、今年シャン州のディーラーがカチン州のいくつかの地域に移動したことを知っている。そのひとつはパカンだ」
  皮肉なことにカチン独立軍は、ビルマ政府との停戦合意の署名に先立ち、カチン州をアヘン・フリーゾーンと宣言している。アヘン・ディーラーは、パカン地域で、停戦に合意した双方の軍、つまりビルマ軍とカチン武装勢力に見張られることになる。
  「いくつかの地域は、防御が完璧であり、すでにアヘン農地を防衛するために地雷が埋められている」
  タンヤンに戻ればチョーイェは、すべての武装勢力グループ、コーカン人、ワ人、カチン人、そしてビルマ軍と停戦合意したシャン人たちと知り合いだ。みなアヘン・ビジネスを行っているグループだ。
 
  「ワ人は、その中でも最も強力だ」
  ワ州連合軍(UWSA)は2万人の強靭な歩兵を有する。彼らは元ビルマ共産党(CPB)傘下にあったが、1989年に暴動を起こし、その後ビルマ軍との停戦合意に至っている。
  チョーイェによれば、ワ州連合軍は1997年から1998年の時点で、ビルマ政府からさらに5年間、アヘンを栽培する許可を得ている。従って多くのアヘン栽培者は、最終期限が来る前に彼らのビジネスを終了させたいと考えている。
  しかしワ軍連絡将校のキンマウンミンの話はこれと違っている。キンマウンミンは最近、タイの国境近くのワ人地域に個別の「公平な」ジャーナリストを招いている。彼によれば、ワ人は、1996年まで麻薬生産に関係していたが、今は行っていないという。
  「われわれは、ミャンマー政府と国際社会の要請により、1996年にアヘン・ビジネスをやめることを決定した。そして、ケシ代用プロジェクトを導入した」
  と、語っている。
 
  地域アナリストは、ワ州連合軍が東南アジアで最も有力な麻薬軍であって、地域の安定に対する恐るべき脅威であると考えている。
  強い軍と麻薬売買の金で動くワ人帝国は、ここ2、3年以内に急速に成長した。ビルマ政府と取引をした多くの他の少数民族集団に似て、ワ州連合軍はビルマ政府首脳との特別な関係を享受している。麻薬取引に加えて、彼らはビルマ内部で合法ビジネスも行っている。
  停戦合意により、ワ人はアヘンを栽培する許可を与えられた。ワ州連合軍は、後にアンフェタミン(別名タイ語でヤーバまたはスピードピル)を生産し始めた。
  シャン州の南部を含むタイ国境に沿ってその帝国を広げたワ州連合軍は、何千ものワ人をモンヨーンに移動させた。そこにモダンな町を建設するために何百万ドルも費やした。タイ当局は、この町が麻薬売買で動いた金によって造られていると主張している。
 

われわれは、真剣に麻薬と戦っている
  ビルマ政府には麻薬根絶15年プログラムがある。ビルマ人は、彼らは真剣に麻薬と戦っていると主張する。驚くべきことに、国連はこれに同意している。ラングーンでの最近の地域大会で、SPDCの第一書記キンニュン中将は、ビルマはアヘン生産を根絶して、「全世界に、承認された」。しかし、アンフェタミンは新たな恐るべき脅威になっている。と語った。
 
  UNDCPのカルバーニ氏は最近、BBCワールドサービスにこう語っている。
  「彼ら(SPDC)は、収穫をモニターする段になると、非常に率直である。場合によっては、かなり効果的に根絶する。収穫が根絶されたところは、決して新しいプランテーションではなかった。アヘン税?これは、非常に悪いニュースである。これは、これまでに報告されなかった。倍のゲーム? ビルマの政府が嘘をついている? ビルマ政府はちゃんとやっている。彼らは撲滅を助けている」
  カルバーニ氏はまた、ビルマは村人にケシの栽培をあきらめさせる計画を成功させ、国連に協力したと語っている。彼は、国連が見積もるビルマの麻薬問題と戦う必要額は、1千万ドルであり、国際社会が投資しなければならないと語っている。村人のために他の収入の道を提供することも同様に必要だが、今のところ、大部分は米国と日本だけがこれを行っており、わずか百万ドルが提供されたに過ぎない。
  国際社会は、このことを認識しない。ビルマは、世界のコミュニティからののけ者である。この国のひどい人権状況と、進行中の政治的抑圧が、援助の再開をくじく。
  「国際社会は、われわれに援助を与える代わりに、指を指して非難する。われわれの業績は、決して承認されない」と、ビルマ麻薬撲滅局のカムアウン大佐が最近語っている。
  内務大臣ティンフラインは、政府は今も麻薬取引をしている地域がビルマと中国および、タイとビルマの国境近くの遠隔地に存在しているという事実を否定することはできないと言った。
 
  しかし、これとはまったく違うニュースがシャン州から届いている。シャン州北部の小さな村クンロンのアヘン農民であるトゥンイエが語っている。ビルマ軍は、村人に会いに来て、アヘン栽培を奨励するというのだ。
  「アヘンが熟すると、われわれからアヘン税を取る」
  と付け加えた。
  多くのアヘン農民が相当な金額をかせぐ。
  「日給は、高い」と、チョーイェが言う。
  「私は、農民に一日1,500チャットを支払った」
  ビルマ政府職員の給料はおよそ4,000チャットである。
 
  タイの国境近辺の状況はどうなっているのだろうか?
  昨年、ビルマの雑誌が、ビルマ兵士は中央から、「土地のものを食べて生きよ」と命じられたことを報告している。これは麻薬取引に関与する許可を暗示している。
  チョーイェは、ビルマ兵士は、自由と自治のために戦っている政治的な武装グループを敵にした戦いはちゃんとやっていると言った。
  「しかし、税を受け取れるので、麻薬工場を攻撃するようなことはない」
  税と引き換えに、ビルマ兵士は、麻薬精練所を防衛する。
  これはまったく政府が言っていることに相反する。そして、政府の言い分は国連薬物統制計画(UNDCP)によって承認されているのだ。
 
  しかし、このことは他のオブザーバーにとっては驚きでもなんでもない。つまるところ、ビルマは麻薬王のための避難所である。ローシンハン(アジア・ワールド会長)は、ラングーンの将軍たちに近しい。アジア・ワールドはビルマの最大のコングロマリットで、ホテル、建設会社、スーパーマーケットなどを経営し、投資金額合計が6億ドルに達している。
  ロー(ビルマの元麻薬王)は、タンヤン地域に彼自身のケシ農地を所有している。
  「彼は、私と同じ地域に30エーカーを持っている」
  と、チョーイェが言う。
  彼の家族と孫たちは、ローの畑に行ってアヘンの花をバックに、ポーズをとって写真を撮ったと言う。ローは、1980年代後期にワ人、コーカン中国人武装勢力、そして政府との間の和平交渉仲介の仕事をしている。
  ローは現在ラングーンの贅沢な家に住んでいる、息子のスティーブン・ロー、別名トゥンミンナインが父と一緒にビジネスを行っている。麻薬に関連した活動のため、彼らは米国に入ることを禁じられている。
 
  驚くに値しないが、過去10年にビルマの麻薬取引は、ビルマ経済に包括的に関わるようになっている。麻薬売買人が国内で合法ビジネスを行うのを許すことによって、ビルマ政府は十年間の経済制裁と失政が引き起こした経済崩壊を、なんとか食い止めることができたのである。
  米国務省の国際麻薬規制戦略の報告では、ビルマでの資金洗浄と他の場所での資金洗浄による麻薬利益の再投資が「ビルマ経済全体的に重要な要因となっている」ことを確認している。
  同報告書は、未発達な銀行業務システムと、資金洗浄に対する措置の不足が「麻薬に関連した収益が合法なビジネスと投資に生まれ変わる環境を形成している」と付け加えている。
 
  ローと同様、クンサー(別名チャン・チーフ、1996年にビルマ当局に投降した元麻薬王)も、自分の資金を投資することができた。クンサーが予想外の降伏をした後、ジャーナリストのバーティル・リントナーはこう書いた。
  「クンサーが降伏した直後に、新しい会社十社がラングーンの不明瞭な住所に登録された。実質的な空部屋になっているタウンハウスに、看板と郵便箱を備え付けただけのものである。建物の登録名義人は、『グッド・シャン・ブラザーズ・インターナショナル社』であり、1995-1996年版のミャンマー・ビジネス名鑑によれば、『輸出入、一般取引および建設』を行っていることになっている」
  タイ諜報部は、クンサーが投降した後およそ、2千4百万米ドルがタイのいくつかの金融機関からラングーンに移送された、と付け加えている。
  SPDCは、政府がクンサーに対し、ビルマの主要都市間のバスを運営するために、当局からの契約を与えたことを認めている。クンサーは米国から指名手配を受けているにもかかわらずである。クンサーは、現在ラングーンで軍の情報部によって保護されているが、さらにタイとの国境の町ミャワディでカジノを開いている。
  チョーイェは、ここ5年ないし、7年の間に、ビルマのすべてのビジネスの50パーセント以上が麻薬売買で動く金によって運営されていると語っている。
 

  現在、ワ州連合軍はヤンゴン航空と、ビルマで最も大手の銀行の一つメイフラワー銀行を支配している。さらに、彼らはビルマのテレコミュニケーション・ビジネスを展開する計画を持っているようである。
  アイクタインは、何族に所属するのかよくわからない華僑ビジネスマンで、かろうじてビルマを話せる程度だが、ビルマ政府からGSMシステムを取り扱う契約を得ているミャンマー・スカイリンク社の専務取締役である。
  アイクタインは、ミャンマーのメイフラワー銀行に影響力を持つ株主である。また、ヤンゴン・ホールディングズとヤンゴン航空もワ人と関係がある。アイクタインのスタッフは、彼らのボスの背景情報を聞かれると、「私は、話せない」と言って回答を拒絶し、電話を切った。
 
タイの麻薬戦争
  麻薬王たちは自由に歩き回れることから、ビルマでの彼らのビジネスはあっという間に成長した。ビルマに隣接するタイは、繰り返し懸念を表明している。
  ここ2年間、タイは西の隣人への不満を隠さない。その結果、タイとビルマとの間の紛争が勃発した。
  タイは、不法貿易を見て見ぬふりをするビルマを非難する。タイ当局は、アンフェタミンは主にビルマからタイに密輸出されていると主張する。タイの麻薬常習者は2百万人以上と見積もられている。タイ麻薬麻薬取締当局は、今年はおよそ7億錠のスピードピルがビルマから流れて来る予想する。
  タイ軍およびタイ政府の高官たちは、国境に沿った麻薬活動に対して決然とした態度をとっているものの、ビルマ側の協力の不足について不平をもらしている。
  タイ麻薬取締職員は、ワ州連合軍が北部の国境に沿って約55カ所の違法な工場を運営していると考えている。これらの工場では年に6億錠のピルを生産することができる。タイ第三軍は、ビルマとの国境問題に対応する部局だが、強いスタンスをとっている。ワタナチャイ・チャイメンウォン将軍は、第三軍の指揮官であるが、ビルマの軍幹部たちの麻薬ビジネスとの関わりを公然と非難し、ビルマはタイに対して麻薬戦争を挑んでいる述べている。
  タイとビルマは、今年始め、衝突した。戦いは、タイ軍とビルマ人軍部隊との間で、黄金の三角地帯を横断するメーサイとタチレイの国境付近で開始された。さらに5月には、タイ軍は、タイ領フアロン・ヒルを占拠したビルマ軍およびワ軍を押し返すために2機のF―16ジェット戦闘機を発進させた。
  両軍は、強靭なスタンスをとり、後退しなかった。ビルマ軍はワ軍と一緒に戦うとの誓約を行い、タイ軍首脳は軍隊に警戒を命じた。
 
  双方が協力することは、簡単には出来ない。
  「タイとミャンマーとの紛争は、われわれが仕事の達成にはプラスにならない」
  と、ジーン・ルック・レマヒュー氏(国連薬物統制計画、UNDCP地域代表)が言う。ビルマ側も、タイ当局が麻薬取引に関与し、ヤーバ生産のために使用する化学製品をビルマに密輸出していると非難している。
  バンロング・インタッカン(42歳、元巡査部長)が最近チェンライ(タイ北部)で検挙された。伝えられるところでは彼は、110万錠のスピードピルと、40キロのメタンフェタミン生産に使用する化学先駆物質エフェドリンを所有していた。
  このタイ職員は、メルセデス・ベンツとBMWの2台の高級セダンを含む、24台の自動車を持っていた。それに加えて、当局が発見して驚いたことには、彼は30の預金口座と、時価1千万バーツ(22万米ドル)を上回る100個以上の宝石を所有していた。
  バンロング・インタッカンは、現在起訴される段階だ。しかし問題は、どのくらいの数のタイ政府職員が、このビジネスに関与していたかである。最も重要なことは、誰が彼らの後ろ楯をしているかということである。
 
  いかなる事件であれ、タイ当局はどうやって国境に人を配置するかということに焦点を絞る。タイ当局は、ビルマとの不安定な国境に沿って、非公式にシャンとカレン武装勢力を再軍備させているとの報告もある。何人かのアナリストは、タイが再び緩衝地帯政策を採り始めていることを示唆している。
  「われわれは、そのことを考えなければならない」
  カレン民族同盟(KNU)の総書記パドーマンシャーは言う。KNUによる麻薬撲滅の努力のためにはタイと協力する必要があると語り、
  「われわれも、麻薬取締り政策を採っている」
  と付け加えた。
  KNU部隊は最近、メソットの反対側のミャワディ付近でビルマ軍前線基地を攻撃し、ヤーバがこの前線基地からタイに密輸出されていると発表した。マンシャーも、ワ州連合軍当局と中国人貿易商がカレン州で活動していると語っている。軍事政権側カレングループも彼らに加担している。マンシャーは、シャン州の麻薬がタイを経由してアジアの市場に至るために、カレン州を通過していると語った。
  同じようなニュースがタイの新聞とTVニュースにしょっちゅう出る。シャン州南部のシャン州軍のヨードサーク大佐が、現在麻薬密売人を攻撃しており、押収囚した麻薬をタイ当局に引き渡している。ヨードサークは、ビルマ政府から麻薬取引に関わっていると非難されているが、彼の軍は、麻薬取引を敵に戦っていると主張する。
  この黄金の三角地帯の新しい対立の拡大に、再び現れた一流のプレーヤーが米国である。デニス・ブレア提督(新太平洋司令官)はバンコクポストに、
  「軍人として、私はタイ当局を支持する」
  と語り、
  「タイへの支持を表明するために、国境をパトロールすることは、われわれの重要政策の一つである」
  と付け加えた。
 
  彼は、タイ、米国、シンガポール軍が参加する第20回コブラゴールド軍事演習の準備と、タイ当局との麻薬撲滅協力の検討のためにタイにいた。
  米軍5千人以上が参加し、タイ―ビルマ国境の近くで演習が行われた。コブラゴールド演習は、チーム・チャレンジ01と呼ばれる演習の一部である。チーム・チャレンジ01にはオーストラリアとフィリピンも加わる。
  この演習にもかかわらず、米国の麻薬撲滅方針をどの部局がリードしているかは、定かではない。米国大統領リチャード・ニクソンが1971年夏に、有名な「対麻薬戦争」を発表して以来、米国は麻薬王攻撃を行ってきた。しかし、成功したとの評価はなく、むしろ麻薬取締の努力は失敗したと言われている。
  米国は、現在タイ軍タスク・フォース399部隊への麻薬取締トレーニングを行っている。米国特殊部隊が、現在タイ北部に配置されている。第三軍と国境警備隊からなる特別委員会が設けられ、米国も、その現代化プログラムのために誘導弾搭載のブラックホーク・ヘリコプターを供給している。
  ビルマ当局は、米国部隊の派遣はビルマへの干渉であると主張する。しかし、米国とタイはローテーションの問題であると述べている。ビルマはタイに対し、その王室を誹謗する手段に出た。同時にビルマ政府は、数千人もの復員軍人に対し、「敵対的な」隣国が自国領を攻撃した場合の非常事態計画の準備をするよう訴えた。
 
  二つの国が互いを非難している一方、ビルマの麻薬密売人たちは世界市場へ麻薬を運搬するための新ルートを見いだしている。タイの諜報源によれば、ビルマのバイヤーたちは、南ビルマから麻薬を輸送する新ルートを開発した。
  今年1月、タイ当局は、アンダマン海でビルマから搬送された5百万錠のヤーバピルと100キロのヘロインを押収した。タイ当局は、この押収によってバイヤーたちは陸地から海に輸送ルートを変更したことが確認できると語った。
  通常、ヘロインとスピードピルは、陸路でタイ、ラオス、中国またはインドへ運搬され、さらに世界の市場に送られる。数年前、チョーイェは、カチン州から200ビス(およそ326キロ)の未加工のアヘンを停戦グループが所有するトラックで運んでいた。そのグループの名前を言うことを彼は拒否している。
  しかし、シャン州北部で活動中のいくつかの停戦グループは、なんら干渉されることなくラックで4,000ビス(5040キロ)程度のアヘンを中国国境に送ることができると、彼は言う。チョーイェは、インド国境への3ヵ月の長い旅行について、いまだ郷愁にふけっている。彼は、アヘン輸送隊を護衛したシャン人キャプテンの名前を明らかにすることを拒否した。そのキャプテンはまだ生きていて、いまだこのビジネスに関与しているからだ。チョーイェは彼の誠実さを誇りにしている。しかし、話がビルマ人に至ると別だ。

  「アヘン・ビジネスでも、ビルマ政府は、最も不誠実だ」
  どうしてか?
  「ヘロインとアヘンを奪い、TVと新聞で発表する。後で国内の市場で転売する。さらにその麻薬をまた押収して再び転売する。こうして莫大な利益を得ている」
  ビルマ政府は自らの悪い評判を振り落す努力をしても、いまだに多くの友人を得るには至っていない。しかし、それはチョーイェにとってはいいことである。ビルマがのけ者になっているのは、当然の報いである。
  ビルマのアヘン・ビジネスは、何十年も続くだろうとチョーイェは語る。カチン州でのアヘン栽培の準備をしている彼は、カルバーニ、ブレア提督、あるいはジェン・ワッタナチャリを気にかけないと言う。そして彼は、ビルマでのロー、アイクタイン、それに他の金持ちの数人のビジネスマンを賞賛する。
  いつの日か、彼はラングーンの豪華なオフィスで将軍たちと袖を刷り合わせることになるとも限らない。チョーイェに幸運あれ。
  (菅原 秀 訳)

出典:Aung Zaw, "Drug, Generals and Neighbors" (The Irrawaddy, June 2001)