トップページ >  ビルマの現状:政治 >  社会 >  スーチー氏釈放を 国際社会が強く要求

社会

スーチー氏釈放を 国際社会が強く要求
2003年6月2日配信 BBCニュース

スーチー氏釈放を 国際社会が強く要求
BBCワールド・サービス
2003年6月2日

国際社会、ビルマの反政府指導者アウンサンスーチー氏の拘束を強く憂慮

 ビルマ最大の反政府政党・国民民主連盟(NLD)のアウンサンスーチー書記長は30日深夜、軍事政権により「保護のため拘束」された。またスーチー氏に同行していたティンウー副議長ら党員19人も同時に拘束された。

 逮捕に先立ち、同日夜にはビルマ北部、サガイン管区のイェウー(マンダレー近郊。ラングーンから北に約560キロ)では、スーチー氏一行の車列の周りで衝突が起きた。この暴力事件には軍政側の反NLD組織が関与した。

 国連、日本、オーストラリア、タイ各政府が一連の事態に憂慮を表明している。これより先に、英、仏、スウェーデン各政府は、首都ラングーンの「ゲストハウス」と呼ばれる政府施設に収容中のスーチー氏の即時釈放を求めている。

 スーチー氏は18ヵ月に及ぶ自宅軟禁から一年前に釈放されたばかりで、当時はNLDと軍政との対話の復活が期待されていた。しかし氏が5月初めから約1ヵ月の予定で行っていたビルマ北部への地方遊説は、日程が進むにつれ次第に緊張が高まっており、NLD支持者と軍政の大衆動員組織である連邦団結発展協会(USDA)の間で衝突が続いていた。

 日本の外務省は「ミャンマー政府がアウン・サン・スー・チー女史他NLD関係者に対し節度ある対応をとり、自由な政治活動の確保を含め速やかに事態を平常化させることを期待している。」との声明を発表した。日本は1988年までビルマ最大の援助国だった。

 ダウナー豪外相はスーチー氏の即時釈放を求めるとともに、豪政府はビルマ大使を召喚し、スーチー氏の拘束について説明を求めたことを明らかにした。国連のアナン事務総長は、事態の進展を関心を持って注視していると語った。

軍政、NLD支部と大学を閉鎖

 NLD筋によれば、軍政当局によって、ビルマ各地の中心的な同党指導者の多くが拘束され始めている。首都ラングーンの党本部は31日に封鎖された。またスーチー氏以外のNLD幹部の自宅周辺には治安部隊が配置され、アウンシュエ議長らNLD中央執行委員7人全員が実質的な自宅軟禁状態に置かれている。電話線は切断されており、外部との連絡がつかない状態が続いている。

 ラザリ・イスマイル国連事務総長特使の補佐役は2日、特使は6日からのビルマ訪問を予定通り行うと述べた。ラザリ特使は2000年10月、NLDとビルマ政府との長期間に及んだ政治的こう着状態を打開する仲介役となった。

 アウンサンスーチー書記長が30日夜に拘束されたのに続き、中心的なNLD活動家が多数逮捕され、NLD支部も当局によって閉鎖されている。

 軍政当局は大学と専門学校の無期限閉鎖を命じ、2日から始まる新学期の開講は延期された。BBCのビルマ担当、ラリー・ジャーガン特派員によれば、大学はこれまでも政治活動の拠点になっており、軍政は、スーチー氏の拘束に反発した学生が抗議行動を起こすことを恐れている。

高まる緊張

 今回のNLDへの弾圧強化が、軍政指導部によるスーチー氏の再度の自宅軟禁につながるのではないかとの懸念が広がっている。

 昨年の自宅軟禁解除は当時、軍政が政治改革を受け入れる兆候だとして歓迎されていた。しかしスーチー氏は最近、変化のスピードを早めず、政治対話をあからさまに引き伸ばしていると軍政を批判、ここ数週間はスーチー氏ら反政府勢力と政府の間で緊張が高まっていた。

 5月24日には民主化運動活動家10人について新たに有罪判決が下され、接収された土地の返還を求める手紙を、農民が政府に出すのを手伝ったとして、1990年総選挙で選ばれた国会議員を含むNLD党員3人が2年の刑、地下活動に関わっていたとしてNLD活動家7人が5年から28年の刑を宣告された。

 ジャーガン特派員によれば、ビルマ政府当局はスーチー氏の支持者に対し、地方遊説中に社会不安を煽るような行動をするなとの警告を行っていた。またスーチー氏は5月初めから約1ヵ月の予定でビルマ北部への地方遊説を行っていたが、軍政は、この間に起きた数々の衝突の責任をスーチー氏に帰そうとしている。

 軍政は30日夜の衝突の死者を4人、負傷者を50人と発表したが、実際の死者はこれよりもはるかに多いと伝えられている

 アウンサンスーチー氏率いるNLDは1990年総選挙で圧勝したが、62年からビルマを支配する軍事政権は権力委譲を拒否した。氏は過去10年間の大半を自宅軟禁状態で過ごしたが、ビルマ人の間での人気は衰えていない。

(訳・編集、箱田 徹)

【補足(ビルマ情報ネットワーク)】  ビルマ亡命政権(NCGUB、本部:ワシントンDC)の情報によれば、30日夜の襲撃は軍政の大衆動員組織・連邦団結発展協会(USDA)と地元の国軍部隊が一体となって行ったもので、実際には70人程度が死亡している。また同筋は、NLDのティンウー副議長は銃撃を受けたものの無事だが、スーチー氏は頭に重傷を負ったと伝えているが、詳しいことは不明。過去の襲撃や妨害は地元当局だけでなく、軍政の大衆組織であるUSDAによって行われてきた。

 一連の出来事は、ラザリ・イスマイル国連事務総長特使が6月6日から5日間の予定でビルマを訪問し、民主化勢力、民族勢力および軍政との会談を通じて政治対話の再開を仲介すると伝えられていた矢先に起きた。ラザリ特使は1日、記者団に対して、6日からの訪問を予定通り行うと述べたが、軍政が中止を要請しているとの情報もある。

 また2日付のネーション紙はタイ国軍筋の話として、5月初めからの一連の暴力事件は軍政内部での権力抗争に関連していると報じた。この消息筋は、国家平和発展評議会(SPDC)議長のタンシュエ上級大将ら、NLDとの政治対話に否定的な勢力が、スーチー氏を逮捕する口実として、緊迫した事態を作り出していたと話す一方、マンダレー近郊の街ピューの映画館で5月15日に起きた爆弾事件など、ここ数週間の一連の爆弾事件との関連をほのめかした。

 この爆発では約50人が死傷し、軍政はカレン民族連合(KNU)を実行犯として非難したが、KNU側は否定している。インド在住の亡命ビルマ人が運営するミジマ・ニュースサービスは現地の情報として、被害に遭った映画館は元NLD党員のビルマ人ムスリムの兄弟が経営しており、この2人は以前から同党の隠れ支持者ではないかと軍政からマークされていた。この兄弟は最近、USDAと地元当局からの寄付要請を拒否したことで、USDAから脅迫を受けていたとされる。