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社会

メータオ・クリニック閉鎖の危機 シンシア医師らスタッフが送還の恐れ タイの人権NGOが警告
2003年10月2日配信 イラワディ誌

【補足(ビルマ情報ネットワーク)】この件については、地元ターク県の当局がシンシア医師を含むメータオ・クリニックのスタッフへの滞在許可を出す方向で動いているとの訂正情報が流れています。またタイ政府の移民労働者取締政策とは直接の関連性もなかったとのことのですが、記録のため掲載を続けます。

メータオ・クリニック閉鎖の危機 シンシア医師らスタッフが送還の恐れ タイの人権NGOが警告

イラワディ・オンライン
2003年10月2日
アンソニー・ファラディ

 タイの人権NGOフォーラム・アジア(本部バンコク)によれば、ターク県メーソットに1989年に設立され、タイ・ビルマ国境で最も重要な役割を担う医療機関メータオ・クリニックが、タイ政府の不法移民労働者取締の影響で、閉鎖に追い込まれる可能性が出ている。

 フォーラム・アジアは1日付で声明を発表し、クリニックの代表者である著名なカレン人医師シンシア・マウン氏をはじめ、クリニックに常駐する100人以上のメディック(正式な医師ではないが医学の研修を受け、知識と技能を身につけた医療従事者)と教師がメーソットを離れ、ビルマへと送還される可能性があると警告した。

 シンシア医師は「クリニックを続けようと手を尽くしているところだ」と話している。現在、地元当局者との交渉が行われている。シンシア氏はクリニックで働くスタッフの労働許可証の更新が可能になることを望んでいるとし、「こうした問題が起こったのは今回は初めてだ」と述べた。

 タイ政府が8月に行った閣議決定により、1万2千人以上の移民労働者が労働許可証の更新が不可能となった。地元当局は9月29日にメータオ・クリニックを検分し、シンシア氏に対し、スタッフにビルマ側への送還準備を行わせるようにと通告した。

 フォーラム・アジアのスナイ氏は2日、「現状のままではシンシア医師とクリニックのスタッフがタイ国内に滞在することはできない」とし、メータオ・クリニックには、タイ保健省による国境保健プロジェクトの下で恩赦が与えられるべきだと述べた。

 クリニックで働くスタッフの一人は今週初めのイラワディの取材に対して、「労働許可証のあるなしに関わらず、我々はこの場所で患者のために働き続ける。もちろん許可証がなければ移動にも支障をきたすことになるだろうが、そうするしか方法がない」と語った。

 スナイ氏は、タイ政府への圧力が強まれば、シンシア医師とスタッフには合法的に滞在する権利が与えられるだろうと見ている。国際社会からの圧力はすでにワシントンのタイ大使館を通じて表明されている。

 一方、ビルマ人移民の権利擁護で知られる、タイ上院外交委員長のクライサック上院議員が来週頭にもメータオ・クリニックを訪問し、シンシア医師と会談するとの噂も流れている。

 フォーラム・アジアは、メータオ・クリニックのスタッフが送還されることになれば、ビルマ軍事政権側から名指しで処罰の対象になるとの強い懸念を表明している。軍政側はこれまでシンシア医師とスタッフを「テロリストの反体制分子」と呼んでいる。

 ビルマ・カレン州のミャワディとの国境近くにあるメータオ・クリニックでは下痢から銃創まであらゆる種類の治療に対応しており、患者は1日200人に達することもある。患者の大多数がビルマからの移民や難民で、わずかな登録料だけで治療を受けることができる。

 シンシア医師は昨年、アジアのノーベル賞と言われるマグサイサイ賞を受賞した。また今年4月には『タイム』誌の「アジアの英雄」の一人に選ばれた。(訳、箱田 徹)