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民族・難民

タイ・ビルマ国境地域訪問(2010年2月)報告書
2010年3月12日配信 ビルマ情報ネットワーク

ビルマ情報ネットワークが2010年2月に行ったタイ・ビルマ国境地域訪問に関する報告書です。

要旨

 ビルマ(ミャンマー)に対する国際社会の関心は、軍事政権が今年2010年に予定している総選挙に集中している。しかしその一方で同国東部の紛争地域の状況は一向に改善していない。とはいえ外部の人間が、正規のルートで東部の紛争地帯を訪れ、実情を調査することはできない。このためビルマ情報ネットワークは2010年2月にタイ・ビルマ国境地域を訪れ、ビルマ東部カレン州から最近タイに逃れてきた難民への聞き取り調査を行った。またタイ当局からビルマへの帰還を迫られている難民や、一時的にビルマに送還された難民からも話を聞いた。限られた環境の中で行った短期間の調査だったが、ビルマ東部で民間人の村を狙った軍事攻撃や強制労働、超法規的処刑などの深刻な人権侵害が頻繁に起きていることを示す証言を得ることができた。なお民主化運動に関与したため投獄された元政治囚たちにもインタビューし、国内での逮捕から現在の亡命生活に至る経緯や、祖国への思いなどを聞いた。
 ビルマ東部では1996年以来、3500の村や集落が国軍の攻撃により破壊された。2008年8月から2009年7月の1年間だけで7万5000人が家を追われた。定住地を失った国内避難民(IDP)は推定50万人だ。このほか国境のタイ側にある難民キャンプには約14万人が暮らす。ビルマ東部での非戦闘員への攻撃や強制労働などの人権侵害が「人道に対する罪」に該当する可能性が指摘されている。
 戦闘や村の焼き討ち、日常的な強制労働などの要因が存在する限り、難民や国内避難民は増える一方だ。一時受入国としてのタイの負担も非常に大きい。とはいえ2005年から始まった第三国定住制度も、根本的な解決策ではない。また、ビルマ軍政が2008年に制定した新憲法が描くビルマとは、非ビルマ民族側が長年求めていた連邦制国家ではない。中央集権的で、諸民族の自治を一切許さないいびつな姿だ。新憲法は軍政と停戦協定を結ぶ民族団体にさえ拒絶されている。こうした大きな不安定要素を抱えたまま、ビルマの民主化改革や国民和解が順調に進む可能性は低い。
 日本を含む国際社会は今こそ、ビルマ東部に平和をもたらし、国民和解を促進するための行動を取るべきである。まず、ビルマの紛争地域で起きている人権侵害が人道に対する罪に該当するとの疑いを調査する委員会を設置するよう国連安全保障理事会に働きかけること。これについては昨年末、日本の国会議員の呼びかけで世界29か国の国会議員442人が国連安保理に調査委員会の設置を求める書簡を出すなどし、日本国内そして国際的な動きが生まれている。ビルマの人権に関するキンタナ国連特別報告者も人権理事会への報告(2010年3月11日現在のドラフト)の中で、「(ミャンマーで起きている)人権侵害の中には、国際刑事裁判所規定の下で人道に対する罪や戦争犯罪に該当する可能性があることを示す報告が一貫して出されている」と述べている。同時に、タイの難民キャンプに暮らすビルマ難民の第三国定住受け入れを継続・拡大し、タイの難民キャンプに暮らす難民への継続的援助と、ビルマ東部にいる約50万の国内避難民への人道援助を検討することも必要である。
 軍政当局と政治的意見の異なる者が参加できなければ、総選挙を含む政治プロセスそのものが正当性を失う。このため日本政府は、すべての政治囚を解放するよう引き続きビルマ政府に働きかけるべきである。また、日本政府が力を入れている人材育成分野では、元政治囚を含む在日ビルマ人への教育支援や、ビルマ人による民主化促進や人権保護などに関する活動への支援を検討してほしい。


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