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国際社会

鳩山新政権誕生、日本のビルマ政策は見直しの好機
2009年9月23日配信 ウォールストリート・ジャーナル

ベネディクト・ロジャーズ、秋元由紀による寄稿

 鳩山由紀夫新首相は、就任後数カ月の間に数多くの課題に対処しなければならない。変化が切実に求められている分野の一つが、日本とビルマの関係である。

 日本ほど、ビルマに対して大きな歴史的責任を持つ国はない。1930年代後半から1940年代にかけて、英国からの独立闘争を指導したアウンサン将軍は、日本人から軍事訓練を受けている。日本は、第二次世界大戦ではビルマを占領し、英国側についた少数民族を激しく弾圧した。もっと最近では、アウンサン将軍の娘であるアウンサンスーチー氏が京都に留学していた。1988年にビルマに帰国し、民主化運動に関わるようになる少し前のことだ。こうした経緯があるにもかかわらず、日本はビルマ軍事政権に政治的、財政的支援を与えてきた。自国の短期的な経済的利益の確保と中国との関係の保守を目的とし、懐柔政策に効果があるという誤った見解を踏襲しているのだ。

 こうした見方によって、外務省は道徳的にも論理的にも混乱している。外務省当局者は、昨年2008年に軍政が行った新憲法制定のための見せかけの国民投票を擁護した。ある外務官僚は大真面目な顔で、軍政が「デュー・プロセス」(適正な手続き)を踏んでいるとし、反体制活動家は裁判を受けてから投獄されていると述べた。この2月には約6,300人の囚人が釈放されたが、日本政府はこれを「前向きな動き」と歓迎した(外務報道官談話、2009年2月22日)。だが大多数は一般刑事囚で、政治囚はたった30人だったのだ。

 日本の前政権もまた、2010年に予定される総選挙について、アウンサンスーチー氏ら主要な民主派活動家が排除されるにも関わらず、民主主義をそれほど強くは擁護しなかった。「『自由で公正』ということの意味を定義するのはとても難しい」と、ある外務官僚は今年前半に語った。5月に日本政府は、スーチー氏に対する訴追を「国内の司法プロセスの問題」とあっさり片付けてもいる(日ミャンマー外相電話会談、2009年5月18日)。さらに先月8月には、中曽根弘文外相(当時)が軍政の大衆翼賛団体「連邦連帯開発協会」(USDA)のテーウー総書記と会談した。同協会は、2003年にスーチー氏の暗殺を狙ったとされる事件を実行している。

 鳩山氏が真剣に変化を求めるならば、日本政府のアプローチを全面的に変更しなければならない。まず始めに、来年の「選挙」に関するレトリックを修正すべきだ。日本政府は軍政を支持するのではなく、実質的な民主化プロセスを求め、見せかけだけの選挙は承認しないと述べることができる。

 このほかにも、日本が一国で行いうる政策がいくつも存在する。日本はOECD(経済協力開発機構)加盟国中で最大のビルマ援助国だ。日本政府はこうした資金の流れを止め、軍政やその翼賛組織に資金が流入することを防いだ上で、独立した組織が担う人道援助にその資金を振り分けることもできるだろう。こうすれば、軍政の官僚を日本に留学させるための奨学金の実施や、USDA関係の事業に対する資金提供といった、日本の援助が抱える大きな問題を解決することができる。その代わりに、難民や国内避難民(IDP)、人権と民主主義に関する事業への支援を手厚くするべきだ。このほか貿易面では、天然ガス、材木と宝石などのビルマ産品の輸入を禁止することもできるだろう。日石ミャンマー石油開発はビルマの天然ガス開発に権利を持っているが、日本政府は同社への出資を引きあげるべきだ。

 他方で多国間での行動も存在する。日本と米国、カナダは、軍政幹部に対する対象限定型制裁の実施に向けて動くことができるだろう。日本政府はまず、以前からこうした制裁措置の対象となっている軍政首脳や政商について、日本の銀行口座を凍結し、こうした個人や実体が関与する金融取引を全面的に禁止することから取りかかるべきだ。鳩山首相率いる日本政府はまた、国連安全保障理事会の理事国として、ビルマに関する議論をもっと積極的にリードする役割を果たすこともできる。日本は武器取引を行っていない。したがってビルマ政府に対する国際的な武器禁輸に向けた働きかけの中心となっても、何の損失も生じない。この他にも、ビルマでの人道に対する罪を調査するための委員会を国連に設置することを支持するべきだ。

 鳩山首相は長年ビルマの民主化を支持してきた。2007年には、ラングーン(ヤンゴン)で日本人ジャーナリスト長井健司氏が至近距離から射殺された。彼は、僧侶による平和的なデモに対するビルマ国軍の暴力的な弾圧の模様を撮影していたところだった。事件の直後に鳩山氏は当時の福田康夫首相に対し国会で質問を行い、次のように述べた。「私は、日本政府の反応がとても鈍いと感じています。日本政府こそ、国際社会の先頭に立って、今こそ軍政側に厳しく自制を求め、スー・チーさんを初めとして拘束されているすべての人々を解放させ、ミャンマーの民主化が実現するようにあらゆる努力を行うべきです。」(2007年10月3日、衆議院本会議。)今こそ、このアプローチを実行する絶好の機会なのだ。

*ロジャーズ氏はクリスチャン・ソリダリティ・ワールドワイド所属の人権活動家(ロンドン在住)。秋元氏はビルマ情報ネットワーク(東京)のディレクター。

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