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経済・環境

ビルマは破産などしていない 国民の貧困の原因は軍政の政策 
2009年8月6日配信 ウォールストリート・ジャーナル

ショーン・ターネル(寄稿文)
ウォールストリート・ジャーナル
2009年8月6日

民主化指導者アウンサンスーチー氏の裁判が長引く中、ビルマ(ミャンマー)が再び注目を浴び、軍事政権といかに付き合うべきかも議論された。クリントン米国務長官は、軍政の気を引くために開発援助を与える可能性を示唆したほどだ。一般にビルマは貧しいと思われている。しかし実際には軍政は見かけほど貧しくはない。

ビルマはアジア太平洋地域の主要な天然ガス産出国として台頭している。現在、その大半はタイに輸出されているが、新しく開発中のガス田からは、大量のガスがまもなく中国に輸出される。天然ガスの価格上昇と需要拡大で、ビルマのガス輸出額は飛躍的に伸び、今年度の貿易黒字は約25億ドルにも上る見込みだ。ビルマの外貨準備高も年度末には50億ドル相当に達するだろう。

だがこうした歳入はビルマの国家会計にはほとんどまったく反映されない。理由は簡単だ。ビルマ政府は、天然ガスによる米ドルベースの収入を「公定」の為替レート(6チャット=1米ドル)で政府会計に計上しているからだ。公定レートは実勢レートの200倍近くであるから、公定レートを使うと天然ガスによる収入は実際の200分の1になる。このため公式には、天然ガスによる収入は歳入全体の1%にも満たないことになってしまう。だが実勢レートでこの収入を換算すれば、ビルマの歳入全体の倍以上になり、ビルマの財政赤字はほとんど解消することになる。

このような会計操作の背景には、ビルマの外貨収入を政府会計から「隔離」することによって、その外貨収入を軍政や政商が自由に使えるようにしたいという思惑があるのだろう。会計操作を可能にしているのは国営の外国貿易銀行と、軍政に協力的な海外のいくつかの銀行だ。

こうして作った財源で潤った軍政は、気の遠くなるような規模の買い物を立て続けに行っている。たとえば新しい行政首都ネピドー(「王の座」の意)の建設や、ロシアや(未確認だが)北朝鮮からの核技術導入費用などだ。なお核技術の使用目的はわかっていない。

こうした政府の振る舞いはビルマでは珍しくない。軍政は1962年にクーデターで政権を握って以来一貫して、国内生産物がもたらす収入を独占し、基本的な市場機構を解体していった。ビルマには実効的な物権は存在しないし、法の支配も弱い。マクロ経済政策の立案も気まぐれで予測不可能な上、不正確な情報に基づいている。軍政の歳出は歳入をはるかに上回り、それを糊塗するための貨幣増刷により、インフレが生じている。主要な企業の大半は軍が所有しており、トランスペアレンシー・インターナショナルの指標によれば、国の腐敗度は世界で下から2番目である。

ビルマの失墜は見るに耐えないほどだ。かつては東南アジアでもっとも豊かな国の一つで、世界一の米の輸出国だった。それが今日、国民の食糧さえ事欠きかねない状況だ。1950年のビルマの国内総生産(GDP)は、隣国タイとほぼ同じだった。両国は宗教・文化・物理的諸条件の類似性が高いにもかかわらず、今日ではタイのGDPはビルマの7倍である。

ビルマの国民は貧しいが、国民を弾圧する政権の側は違う。この等式を変えることこそが、ビルマの経済発展につながる本当のカギとなるのであり、国際社会の努力が向けられるべきなのだ。


ターネル氏はビルマ・エコノミック・ウォッチの編集者で、オーストラリアのマッカリー大学の助教授(経済学)。

日本語訳 ビルマ情報ネットワーク