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社会

サイクロン「ナルギス」襲来後にビルマ軍政が犯した人権侵害について国際刑事裁判所による調査を求める
2009年2月27日配信 ジョンズ・ホプキンズ大学ブルームバーグ公衆衛生大学院付属 公衆衛生・人権センター/ビルマ緊急援助チーム(EAT-Burma)

報告書『サイクロン「ナルギス」襲来のその後~イラワジ・デルタからの声』(原題 "After the Storm: Voices From the Delta") が本日、発表されました。ジョンズ・ホプキンズ大学ブルームバーグ公衆衛生大学院付属の公衆衛生・人権センター、そしてビルマ緊急援助チーム(EAT-Burma)との共同出版です。

ジョンズ・ホプキンズ大学ブルームバーグ公衆衛生大学院付属 公衆衛生・人権センター/ビルマ緊急援助チーム(EAT-Burma)

2009年2月27日午前10時解禁(バンコク時間)

サイクロン「ナルギス」襲来後にビルマ軍政が犯した人権侵害について国際刑事裁判所による調査を求める


昨年5月にビルマ(ミャンマー)を襲ったサイクロン「ナルギス」による被災地の状況について、本日、初の独立の報告書が出版された。報告書は、国連安保理が被災地域で起きた人権侵害の調査を国際刑事裁判所(ICC)に付託するべきだとしている。

サイクロン「ナルギス」はビルマ近代史上最悪の自然災害だった。しかし報告書『サイクロン「ナルギス」襲来のその後~イラワジ・デルタからの声』によれば、ビルマ軍事政権(国家平和発展評議会=SPDC)は被災者への救援活動を妨害、援助関係者を逮捕し、正確な情報の収集や発信を厳しく制限した。

被災地で見られた侵害行為は、被災者の生存に必要なニーズに適切に対応できない状況を作り出すことで「身体または心身の健康に対して故意に重い苦痛を与え」、国際刑事裁判所に関するローマ規定7条1項(k)に違反している可能性がある――今回の報告書はこのように指摘している。

ジョンズ・ホプキンズ大学ブルームバーグ公衆衛生大学院付属公衆衛生・人権センターのディレクター、クリス・バイラー教授によれば、報告書の内容はビルマ軍政が犯したさまざまな侵害行為の証拠となるもので、それらの行為は人道援助に関する国際基準に違反し、災害救援についての法的枠組みからも外れている。

バイラー教授は「被災地域の人々の話によれば、ビルマ軍政は救援活動を妨害し、支援物資を盗み、土地を接収し、復旧事業では子どもによるものも含めて強制労働を使った。しかし報告書はまた、政府の妨害にもかかわらず、隣人を助けようと努力するビルマの一般市民の感動的な姿をも収めている」と述べた。

2008年5月に襲来したサイクロン「ナルギス」は14万人近くの犠牲者を出し、数百万人のビルマ国民に影響を及ぼした。中でも被害が大きかったのは、イラワジ(エーヤワディ)・デルタだった。報告書は、同年6月から11月にかけて、民間の援助関係者や被災者90人を対象に行った聞き取り調査の結果に基づいている。食糧や水、住居といった基礎的なニーズがまだ満たされていないことのほか、ビルマ当局による救援物資の横流しや横領、転売、また強制移住などの被災者に対する人権侵害の様子が詳細に述べられている。

報告書はジョンズ・ホプキンズ大学ブルームバーグ公衆衛生大学院付属公衆衛生・人権センターと、タイ・ビルマ国境に拠点を置き、サイクロン被災地域出身者らで構成するビルマ緊急援助チーム(EAT-Burma)が共同で出版した。

ビルマ緊急援助チームの代表で、著名な人道活動家として知られるシンシア・マウン医師は、国際社会に対し、追加支援を行う前にイラワジ・デルタ地域の政治的現実をよく見てほしいと訴えた。同医師はこう述べる。「持続可能な復旧活動や再建事業を効果的に行うには、地域ベースの団体が、そのプロセスに制約を受けずに参加できなければならない。それなのに、ビルマでは人々が支援をしようとしたり、苦しむ国民を自分たちの一員として助けようとしただけで投獄されている。これは非人間的なことだ。」


問合せ先(編注:省略)

出典:Report Calls For Burma's Leaders to be Investigated for Human Rights Abuses Over Nargis Response, Press Release, February 27, 2009.

(日本語訳 ビルマ情報ネットワーク)

【背景】
ビルマは国際刑事裁判所(ICC)の締約国ではないので、ICCがビルマ軍政や国軍による犯罪について管轄権を持つには、国連安保理がビルマで起きている問題をICCの検察官に付託することが必要。付託決議が採択されるには理事国15か国中9か国が賛成し、常任理事国による拒否権の発動もあってはならない。これには前例があり、スーダン・ダルフールでの状況をICCの検察官に付託する決議が2005年に採択されている。(ビルマ情報ネットワーク)