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社会

ウィンティン氏「総選挙強行は解決にならぬ」
2009年5月17日配信 朝日新聞「私の視点」

政治囚として19年間獄中で過ごし昨年釈放された、国民民主連盟(NLD)中央執行委員でジャーナリストのウィンティン氏による投稿 「総選挙強行は解決にならぬ」が、2009年5月17日付の朝日新聞「私の視点」欄に掲載されました。

2009年5月17日 朝日新聞「私の視点」

ミャンマー
総選挙強行は解決にならぬ

ウィン・ティン/国民民主連盟(NLD)中央執行委員・ジャーナリスト

 「選挙が即民主主義を意味するわけではない」「恣意的拘束や汚職といった問題も選挙で解決を図れるかは分からない」(オバマ米大統領)
 
 選挙は民主主義を意味しない。これは、私の祖国ビルマ(ミャンマー)では全くの真実だ。

 40年以上も国民が軍事政権の弾圧に苦しみ、今は来年に予定される総選挙という大問題に直面している。実施されれば恒常的な軍事独裁体制が法定化されてしまう。

 62年までは、国民が選挙で代表を選べた。一党支配下の74年から88年にも選挙はあったが、ネ・ウィン将軍が選んだ候補者に対抗する者はいなかった。だが、26年間続いたネ・ウィン体制は88年の民主化蜂起で崩壊。デモには数百万人が参加し、多党制民主主義を求めた。

 今の軍政はデモを武力で封じ込めた後、多党制の総選挙による文民への政権移譲を約束したが、90年にアウン・サン・スー・チー氏が率いる国民民主連盟(NLD)が8割以上の議席を得たのに結果を認めず、当選議員や党幹部らを逮捕した。

 軍政は各政党に憲法制定会議(国民会議)への参加も強要。自由な議論を制限し、軍が国政に主導的役割を持つとの新憲法の原則への賛成を求めた。NLDは会議をボイコットし、問題解決のため軍政に対話に応じるよう求めた。

 だが、国民会議は07年に終了し、軍政任命の委員会が憲法草案を作成。08年5月、軍政はサイクロン襲来直後の混乱の中で国民投票を強行し、憲法を承認させた。そして10年に「自由で公正」な総選挙をするという。

 AFP通信によれば、中曽根外相と国連のガンバリ事務総長特別顧問は「総選挙が国際社会に祝福されるものとなるようミャンマー政府に働きかけていくことで一致」した。実施を望み、NLDや民族政党にも参加してほしいようだ。

 だが、スー・チー氏を含む2100人以上の政治囚を釈放し、政治プロセスに自由に参加できるようにしなければならない。憲法も軍、NLD、民族代表の三者による見直しが必要だ。選挙はこれらが満たされて初めて実施されるべきだ。

 新憲法は軍が行政・司法・立法の三権を支配し、諸民族を多数派のビルマ民族に従属させる内容で、基本的人権や民主主義を保障するものではない。総選挙を強行すれば結果として軍政による不正義や残虐行為が続き、人々の抵抗は激化するだろう。

 国際社会は総選挙を支持する前に、国民和解に向けた対話をするよう軍政に最大限の圧力をかけてほしい。



89年から19年間を政治囚として獄中で過ごした。(14日にスー・チー氏が軍政に刑事訴追される前の寄稿)