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経済・環境

ビルマのITドリーム
2001年5月1日配信 イラワディ誌

ビルマのITドリーム
マウンマウンウー (月刊イラワディ2001年5月号)

◎IT時代へのビルマの遅すぎた進出は、インフラの欠如と、情報の流れによって統制を失うことを恐れる支配政権によって妨げられている。

 今年3月、国家平和発展評議会(SPDC)を支配する一人、SPDC第一書記キンニュン中将は、ビルマ(ミャンマー)の最初の情報コミュニケーション・テクノロジー・パーク(ICT)の起工式の礎石を置いた。
 有名な週刊誌「リビング・カラー」などは、このICTパークをシリコン・バレーに対するビルマの答えであると誇った。しかし、これは早まった主張である、実際は、この国がそうなるためには数10年かかるだろう。

 「情報テクノロジーは、現代化を切望する国が占有し、利用しなければならない先進の知的部門である」
 国防省の戦略研究所によって組織された電子商取引会議の開会式で、キンニュンはこう述べた。しかし、ビルマの多くの人々は、ビルマ初のITパークに対して依然、懐疑的である。

 SPDCがこの12月シンガポールでe‐ASEAN合意に署名して以来、「IT革命」はビルマの人々に、国を経済危機から救うことができ、ビルマにIT時代をもたらすと信じさせる常套句になった。
 それでも、ほんの少しの人々しか、このITプロジェクトに対しては望みを抱いていない。頻繁な停電、抑圧的なインターネット法は、IT時代に突入しようとするビルマへの明確な障害である。さらに、今のところ、ビルマのソフトウェア市場はかなり小さい。銀行とデパートだけがコンピューターを使っているに過ぎない。

◎一方、政府は、導入するのはインターネットではなく、イントラネットだと発表した

 SPDCは、国はまだIT革命の準備ができていない、国内のITへのインフラはいまだ建設中である、と認めた、

 「ミャンマーのITインフラは、当面、他国のそれに少しも似ていないが、われわれはすでに資源を保有しており、デジタル格差を埋めるための必要な準備を行っている」
  キンニュンは、ミャンマー・コンピューター連合の議長であり、5月3日のミャンマー・コンピューター技術開発評議会とASOCIO(アジア海洋コンピューター産業組織)との会合での演説で、こう述べた。

 ICTパークの大騒ぎはいったい何のためなのだろうか? ラングーンのアナリストは、政府が日本政府から援助を受けることを期待していると考える。日本の前首相森喜朗は、日本政府はITセクターの開発のために、発展途上国に150億米ドルを援助する包括的政策を行うと語った。そのほとんどは、ビルマを含むASEAN諸国となる。この援助を受けるために、ビルマはIT革命の準備をしているというわけだ。これとは別に、ラングーンとしても海外の投資家を誘いたいところだ。

 国のIT産業界を発展させるには、IT開発を容易にするインフラを確立することが必要である。少なくとも、信頼できるテレコミュニケーション・システムが、IT革命には必要だ。
 しかしビルマの電話線の供給は、不十分である。電話を保有している人々は、181人に一人に過ぎない。しかもビルマでは当局との関係がない限り、電話回線を申し込むことは容易ではない。

 ラングーンの有名な私立コンピューター学校のトレーナーが言った。
 「ビルマでは、私のコンピューター訓練校にさえ、インターネットに接続する十分な電話回線がない。私は学生に、IT理論を教えることができるだけである」彼は、インターネットのアクセスのない学校でITを教えるのは、目の見えない人が目の見えない人を指導するようなものだと語った。ビルマのその他の私立コンピューター学校も、同じ問題に直面している。

 電力の不足は、おそらくビルマのITドリームに対する最大の障害である。ゾーウィン(コンピューター・ハードウェア・サプライヤー)は、こう論評した、 「AC‐DCコンバーターと、コンピューター用小型電池が、ビルマのコンピューター・ユーザーの最も切実な要望である。頻繁な停電のためである」
 ラングーン住民への電力供給は割り当て制であり、一日数時間だけ通電するに過ぎない。

 「ITはこの国に欠くことのできないものであることに同意する」
 ラングーンでコンピューター・サイエンスを学ぶ学生は、名前を明かさないとの前提でこう語った。しかし、彼はビルマの現在の状況は非現実的であると感じている。
 「われわれは、人材を必要とする」
 とも付け加えた。

 1994年になって初めて、ビルマの最初の一群である87人の学生が、コンピューター科学専門学校を卒業した。この専門学校は現在、コンピューター大学として知られている。IT産業のための専門家の不足がもうひとつの障害であると、チョーサン(現在シンガポールのソフトウェア会社で働いているソフトウェア・エンジニア)が言った。
 「私のビルマの友人は、ビルマ語でコンピューターの本を書いているが、ITをビルマの人々に紹介しているにもかかわらず、彼自身ワールドワイド・ウェブにアクセスできないと話した」

 最近、ビルマでの主要なコンピューター会社は、ミャンマー・コンピューター科学者協会(MCSA)、ミャンマー・コンピューター工業会(MCIA)、ミャンマー・コンピューター愛好協会(MCEA)、ミャンマー・コンピューター連合(MCF)のようなコンピューター組織を結成することができるようになった。IT産業を拡張するために、これらの団体は、政府系銀行からローンを受けることができる。それに加えて、2000年11月に政府も、ミャンマーICT開発会社によって運営されるe国タスク・フォースを設立した。政権によれば、このタスク・フォースが、e‐ASEANのフレームワーク合意を実行することになっている。

 ビルマのIT革命の準備に対する批判にもかかわらず、国内には現在小学校から大学レベルまで400のIT教室がある。ラングーン、マンダレーの2つのコンピューター大学、国内主要都市の19のコンピューター大学が、人材供給のために設立された。それにもかかわらず、これらのコンピューター学校には、プロの先生が不足している。

◎「われわれはウェブサイトを立ち上げたけれども、ウェブ・ページをチェックすることができない」と、ラングーンの有名な雑誌編集者が語った

 インターネット喫茶店が隣国諸国で急成長する間、ほんの少しのサイバー・カフェがラングーンに出現した。しかし、インターネット喫茶店と言うものの、実際、インターネットにはアクセスをしない。顧客がCD-ROMを使うのを許可されるだけである。

 ビルマの支配者たちは、新技術のチャンスを利用していない。1996年9月、ミャンマー・コンピューター開発法が発布された。この法律によれば、許可なしにコンピューターまたはモデムを所有する者を、禁固7年ないし15年の罪で刑務所に収容できる。ビルマでは、不法にファクスを所有すれば、最高7年までの実刑に処されることがある。

 現在、ビルマにはおよそ3,000人の電子メール・ユーザーがいる、およそ25のIT会社がインターネットを接続できる。今年、民間の定期刊行物と雑誌がウェブサイトを開く許可を与えられた。しかし、それはIT会社を通じてでなければならない。皮肉にも、これらの雑誌編集者は、彼ら自身のウェブサイトを見ることができないのである。
 「われわれはウェブサイトを立ち上げたけれども、ウェブ・ページをチェックすることができない」と、ラングーンの有名な雑誌編集者が語っている。

 一方、電子メール・サービスの加入者は、IT会社からメールを受け取るまで3、4日待たなければならないと不平を言う。実際、多くのIT会社は、SPDCの親戚または、幹部に近しいビジネスマンによって支配されている。ラングーンの有名なビジネスマンであるピョンマウンマウンは、IT関連会社であるCEテクノロジーを立ち上げた。
 誰がITから利益を得るのか? 政府と諜報機関だけである。政府は自身のウェブサイトを持ち、政府のプロパガンダと海外ニュースを配信している。同時に諜報機関は、そのユニットとスパイ網によって、効果的に情報を集め、発信している。

 一方、政府は、導入するのはインターネットではなく、イントラネットだと発表した。イントラネットは、国内での使用だけのためにあって、ワールドワイド・ウェブにアクセスをしない。ラングーンの消息筋は、主なサーバーが16本の電話回線を持つに過ぎないと言っている。

 インフォリズムIT社のCEOであるチットゥンペは主張する。
 「イントラネットかインターネットであるかどうかに関係なく、両方ともサイバー・ハイウェイに至るのである」
 おそらく近い将来、ビルマの電子メール・ユーザーは、イントラネットを使うことが出来るだろう。しかし、料金は安くない。イントラネットに加わるためには、50FECまたは50米ドルを費やさなければならない。大部分のビルマ人の平均月収の数倍にあたる。

 独裁的な将軍たちと、民主的なITは不似合いなパートナーである。次のシリコン・バレーというビルマの期待は、実現しない夢になるであろう。

(訳、菅原秀)

出典: Maung Maung Oo, "Burma's IT Dream" (The Irrawaddy, May 2001)