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経済・環境

タサンダム情報(1)
2002年12月23日配信 ビルマ情報ネットワーク

 先週(12月17日)、建設作業再開に向かって動いているとお伝えしたシャン州のタサンダム(注1)についてです。今回は建設再開に関する地元のNGOの動きや、建設予定地周辺の状況などをまとめてお伝えします。

 12月13日付のバンコクポスト紙は「タイのMDX社が20日にもビルマ軍事政権とタサンダム建設に関する覚書を取り交わす予定だ」と報道しました。これを受けて、18日には同ダム建設に反対するNGOなど70近くの団体が、タイ議会の上院外務委員会に対して「ビルマに民主主義が実現し、建設現場周辺の住民の権利が尊重されるようになるまで」ダム建設をしないように求める請願書を提出しました。

 請願書には、建設反対の理由として次の事項が挙げられています。

タイは40%もの電力供給過剰の状態にあるが、タサンダム建設によって生産される電力が本当に必要なのか、調査が行われていない。タサンダムは、建設予定地が地震発生地域にあるなど様々なリスクを抱えているが、タイ国民がこれらのリスクを負うことになる。
世界ダム委員会(注2)は「ダムによる水力発電は持続不可能であり、ダムには隠れたコストが多々かかる」と報告している。
非常に豊かな水生態系を破壊し、気候変動や洪水などの環境危機を悪化させる恐れがある。水没予定地域では既に森林(特にチーク材)の伐採が始まっている。建設再開によって伐採地域がさらに広がる恐れがある。
タサンダム建設予定地周辺では、駐留するビルマ国軍の部隊が急増した。この1年で歩兵部隊の数が6隊も増え、現在は少なくとも17の歩兵部隊が駐留している。
建設予定地域の住民に対して、駐留するビルマ国軍による様々な人権侵害が起きている。1996年から98年にかけては、軍の進出に伴って数十万人もの住民が強制移住させられた。また強制労働、強かん、超法規的処刑、市民権のはく奪などが今も続いている。市民権をはく奪されると、土地の補償などを受けられなくなる。
ダム建設が再開すれば、軍による迫害を受けたり生計を失ったりした人々が大量にタイに流入することが予想される。
 12月19日付のバンコクポスト紙によると、上院外交委員会のクライサック委員長はMDXなどに対し、タサンダム建設予定地域での人権侵害状況が悪化する恐れがあることなどを理由に、建設に関する覚書の交換を取りやめるよう呼びかけました(注3)。12月20日に予定されていた交換が実際に行われたのかは現時点では不明ですが、情報が入りしだい、BurmaInfoでもお伝えしていく予定です。

 なお、請願書本文(英語)と賛同団体のリストはRWESA(東アジアと東南アジアのダム開発問題に取り組むNGOの連合体)のウェブサイトでご覧になれます。URLは次の通りです。http://www.rwesa.org/statement/statement20021218.html

秋元由紀(BurmaInfo)

注1:
タサンダムはシャン州南部を流れるサルウィン川に架かる予定の大型ダム(高さ188m、出力3600メガワット)。タイのGMSパワー社が中心となって事業化調査を行い、生産される電力の大部分をタイが購入することになっている。施工可能性調査(F/S)は日本の電源開発社が実施した。一時期は建設作業が中断されていたが、ここ数か月で再び動きが出てきている。

注2:
世界ダム委員会(日本語の概要)は1998年5月に世界銀行と国際自然保護連合(IUCN)によって設置され、大型ダム開発の有効性の検討や、エネルギー開発の代替案の調査などを行った。2000年11月に最終報告「ダムと開発」(IRN/メコンウォッチによる日本語での要点整理)を出した。
 なお同報告書を国際河川ネットワーク(IRN)が編集した「WCD市民ガイド」(2002年2月発行)には日本語版(一部500円)がある。問い合わせは、ルイサ・ジャパン(rwesa@foejapan.org、FAX 03-3951-1084 まで)

注3:
タイ上院委員会、ダム計画中止を求める


バンコク・ポスト
2002年12月19日
(抄訳。週刊Burma Todayより転載)

 タイ上院外交委員会はタイ電力公社(EGAT)とMDXに対し、国家の安全とイメージ低下の懸念を引き合いに出しながら、サルウィン川のダム建設中止を求めた。クライサック外交委員長は18日、ダム建設プロジェクトはビルマの人権侵害をさらに引き起こし、多くのビルマ人が抑圧され、タイに流入するだろうと述べた。MDXはシャン州を流れるサルウィン川に3,600メガワットを発電するタサンダムを建設する念書をビルマ政府との間で20日に署名することになっている。一方、EGATは政府に対し、タイ-ビルマ国境に位置するメーホンソン県メーサリアン郡のサルウィン川下流に建設される2つのダム建設工事の許可を求めた。サルウィン川ダム建設プロジェクトは、11月にカンボジアで行われたASEANサミットで協議され、各国の電力省はプロジェクト推進に合意した。ビルマ政府はASEAN諸国に対し、ビルマの基本的なインフラストラクチャー発展のための支援を促している。クライサック外交委員長は、上院は首相、外務大臣およびEGATとの間でこの議論を取り上げると述べている。
 ビルマ民主化を求めるタイ活動委員会のナッシル氏は、ダム建設は東南アジアで最も豊かな河川の生態系を破壊するだろうと述べた。また、サルウィン川は13の民族から構成される1千万人以上の生命線であると氏は付け加えた。タイはすでに十分な電力供給があるため、当面は水力発電ダムの必要性はない。18日、ナッシル氏はクライサック氏に嘆願書を提出し、上院が政府と関係機関がダム建設計画を支援することを止めさせるよう要請している。嘆願書には環境問題と人権問題に関する活動をしているタイとビルマのNGO69団体が署名している。
 ナッシル氏は「タイ政府は、安定した電力のためにはもっと適切な他の方法を検討すべきであり、ビルマに民主主義が欠如していることを利用してプロジェクトを推し進めてはいけない」と述べた。