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経済・環境

向こう見ずな伐採 アジアの木材を吸い上げる中国
2003年1月24日配信 ニューズウィーク

向こう見ずな伐採 アジアの木材を吸い上げる中国
ブルック・ラーマー、アレクサンドラ・A・セノ
ニューズウィーク
2003年1月24日

 中国南部、雲南省の国境にある新興都市、瑞麗(ルイリー)の大通りを少しそれたところに、三階建ての豪華な宮殿風の建物がある。この邸宅はビルマの雨林の略奪、そして木材に対する中国の飽くことのない欲望の記念碑のようなものだ。所有者である木材輸入業者のメン・ジャンチン氏(50)は、時おり立ち止まり、磨かれた木製の手すりに手を滑らせながら、訪問者らに邸内を案内するのを楽しんでいるようである。豪奢ならせん階段は、氏が「すべてビルマ産」だと言う貴重な5種の木材でできている。庭に出たメン氏は、何十もの外国産の鳥がいる鳥小屋と、悲しそうな目をしたサルが入った2つの檻を得意そうに見せる。この鳥やサルも、木材と同じように原生雨林から捕られてきた。この原生雨林はメン氏の南西開発社が皆伐に関わっており、永久に姿を消そうとしている。

 アジアの森林は驚くほどの速さで破壊されているが、今それは中国のせいだとされている。過去30年間で、日本の木材需要がフィリピンとボルネオの雨林の破壊につながった。環境保護論者らは、なんとも皮肉な成り行きも手伝って、今度は中国が残りの森林を破壊するのではないかと恐れている。1998年に森林破壊によるひどい洪水被害に見舞われた中国では、政府が長江と黄河の上流域での森林伐採を禁止し、他の地域でも伐採量を大幅に減らすよう命令した。しかし、こうして中国が国内での自然災害を防ごうとするにつれ、国外で大災害が起きている。国内での供給量の不足を補うため、中国はビルマからシベリア、インドネシアの森林を、大部分は不法伐採によって伐りつくしているのである。「悔しい状況だ」と北京のある森林保護専門家は述べる。「伐採禁止措置は中国の環境には良いのだが、国外の森林破壊につながっている。」

 中国はほとんど一夜にして、米国に次ぐ世界第二の木材輸入国となった(中国が輸入する未加工木材は1998年から3倍以上に増え、1500万立方メートルに達する)。非常に大きな原因のひとつが国内の伐採禁止措置だ。中国は現在、消費する木材の半分しか自国で生産していない。原因は他にもある。中国の新興中流階級が新しい家を購入し、政府が巨大な土木事業を行うにつれて国内消費量が急増していることだ。中国の世界貿易機関(WTO)加盟で木材輸入関税の大部分がゼロとなり、輸入が増加した一方で、パルプを始めとして紙、家具、装飾品の輸出が急拡大した。そのほとんどは欧米向けだ。WWF(旧、世界自然保護基金)北京事務所の森林プログラム代表、ズ・チュンカン氏は「雨林の破壊は中国だけのせいではない」と述べる。「生産者から消費者まで、皆に責任がある」

 中国の木材需要は合法な輸入だけでは足りないため、不法伐採を急激に増やす原因にもなっている。国際的な森林専門家らによれば、中国の木材輸入の約40%が不法な皆伐によって得られており、地球上のきわめて重要な森林を脅かしている。中国の輸入量の半分近くは極東ロシアの針葉樹林だ。一帯は荒々しい辺境地帯で、貧困や腐敗があり、取り締まりもほとんど存在しないため、民間企業の不法伐採が可能になっている。こうした企業は中国人マフィアが支配していることも多い。1997年には100万立方メートル未満だったロシアからの木材輸入量は、2001年には900万立方メートル近くにまで増えた。そのうち5分の1が密輸と考えられている。中国北部黒竜江省の都市、綏芬河(スイフェンヘ)には毎日材木を積んだトラックが200台も着き、急拡大した輸入の影響を実感することができる。

 環境保護論者らは、その豊かな生物多様性から「地球の肺」とされる東南アジアの熱帯雨林の破壊にさらに大きな懸念を寄せている。例えば、インドネシアの低地部の森林は軍関係者、材木王、多国籍企業の腐敗した三角関係によって組織的に破壊されている。専門家によれば、インドネシア産木材の4分の3近くが不法伐採だ。なお世界銀行は2002年10月、スマトラ島の「保護公園」で材木の不法取引が野放しに行われていることを理由に、最後の森林保全事業を停止した。この速さで破壊が続けば、スマトラ島では2005年までに、カリマンタン島では2010年までに森林が姿を消すだろう。米国企業もこの破壊に加担した可能性がある。米国は2000年に、インドネシアから4億5千万ドル(720億円)分以上もの木材を輸入した。

 今はこの市場に中国が積極的に参入してきて、森林を広い範囲で貸し出し、競争者を締め出している。2002年に廃業を余儀なくされたフィリピンの木材輸入業者は「中国は供給を吸いまくっている。中国の方が高値を払うのでわれわれは競争できない。中国の木材需要は信じられないほど大きい」と話す。実際、中国の需要がどれほど大きいかといえば、中国は急速にインドネシア産不法木材の最大の輸出先になりつつある(国際熱帯木材機関(ITTO)は2002年の報告書で中国をマレーシアに迫る2位としたが、専門家によると、マレーシアに輸出された木材の多くが中国に再輸出されている)。不法木材は(インドネシアでは非課税で、中国では関税が掛からず)安く、中国本土の企業は箸から家具まで、あらゆる製品の輸出市場で非常に強い競争力を持つ。丸太についてもそうだ。事実、ジャカルタのとある企業の場合、インドネシアで生産され、中国の港を不法に経由した丸太の方が、インドネシアで売られている合法の丸太よりも安いのだ。

 インドネシア政府は森林破壊対策をほとんど講じていない。うっすらとした期待感が生まれたのは、2002年にインドネシア海軍が、不法と推定される中国向けの丸太2万5千立方メートルを積んだ貨物船3隻を拿捕した時だった(インドネシアは丸太の輸出を禁止している)。船と丸太は没収され、船員らは7カ月も拘束された。イギリスのNGOであるEIAは、入手した文書から、この輸出にインドネシアの有力な材木王と中国の大手の国営運送会社が関係していることがわかると主張する。しかし、昨秋インドネシアのメガワティ大統領が中国を訪問した後、この事件の調査は中断、船員は釈放され、没収されていた丸太は警察によって競売にかけられ、売却された。この事件を調査したEIAのドハーティ氏は「これは木だけの問題ではなく、どのような統治が行われているかという問題だ」と述べる。

 インドネシアの評判をひどく悪くしたこの事件だったが、一縷の望みももたらした。2002年12月の終わりに中国・インドネシア両政府は、中国への不法木材の流入抑制の覚書に調印した。覚書には具体的な計画や政策は述べられておらず、目標が列記されただけだった。しかし活動家らは、この覚書は両国政府のアカウンタビリティを問う第一歩だと見ている。インドネシア、ジャワ島西部の都市ボゴールにある国際林業研究センター(CIFOR)のケイモウィッツ所長は「中国側に木材貿易の統制に協力しようという真剣な気持ちがあるのなら、ある程度の改善が見られるだろう」と言う。同氏が楽観的な理由には、このような覚書の調印自体がかなり珍しいという事実がある。伐採の70%が不法に行われている(そしてその多くが中国に流れる)カンボジアでは2003年1月、政府自らが不法伐採の監視契約を結んでいた環境保護団体グローバル・ウィットネスを国外追放した。追放の理由は、このNGOが木材取引に関与している政府関係者の実名を挙げたからだった。

 そんな中、人々で賑わう中国国境の町瑞麗では、メン氏が555タバコを立て続けに吸いながら、ビルマ政府が中国への木材輸出を厳しく取り締まっていることについて文句を言っている。同氏は元兵士で、角刈りにしている。氏の最初の仕事は1990年にビルマの山中を約50キロ旅したことで、帰りにはチーク、シタン材などの貴重な熱帯堅木の丸太を積んだ馬100頭を連れてきた。大規模な、取締りのない貿易のおかげで何百平方マイルもの原生林が裸になった代わりに、メン氏は今、瑞麗でもっとも裕福な1人だ。何十人もの従業員や材木でいっぱいの倉庫をいくつも持っている。直径が約1.5メートル、樹齢100年以上の木もある。それらは高級木材ではない、とメン氏は言う。高級木材は今やラングーンから上海に直接運ばれる。そして、検査が厳しくなったため今では高級でない木材さえも夜中に取引される。このこともあって、メン氏は木材貿易から徐々に手を引き、漢方薬の取引を始めようとしている。

 それでもまだ、メン氏はたやすく木材を調達できる。2台ある携帯電話のうちの1台を使ってビルマのカチン州の「ゲリラ政府」の関係者だという者に電話をすればすむ。「電話から24時間以内にトラックが配達に来る」と言う。それほど簡単なのだ。こうしてまた、世界の原生林の一塊が中国に運ばれてくる。世界最速のスピードで成長する経済のために切られ、ひかれ、形づくられるために。

(訳、秋元 由紀)

出典:'A Reckless Harvest', by Brook Larmer and Alexandra A. Seno, Newsweek, January 24, 2003.