トップページ >  ビルマの現状:政治 >  経済・環境 >  メコン河開発とビルマ・シャン州東部

経済・環境

メコン河開発とビルマ・シャン州東部
2003年9月10日配信 シャン・ヘラルド・ニュース

メコン河開発とビルマ・シャン州東部
岩礁爆破と地域開発の破壊的影響 ラフー人組織が報告書を発表

 ラフー民族発展機構(LNDO)は9月5日、新たな報告書を刊行し、メコン河の浚渫を目的とした岩礁爆破工事がビルマ(ミャンマー)のシャン州東部に及ぼす悪影響を指摘した。この報告書「メコン河開発とシャン州東部:岩礁爆破と地域開発の破壊的影響」(全41頁)によれば、アジア開発銀行(ADB)が提唱するメコン河流域開発計画は、同州東部の環境破壊を招いているだけでなく、現地に住む人々に更なる抑圧が加えられ、地元社会がより一層の貧困に苦しむ一因となっている。シャン州東部はサルウィン(タンルウィン)河以東からメコン河西岸の地域で、河を挟んでラオスと国境を接する。

 報告書は2002年12月~03年5月に行われた調査に基づいたもので、岩礁爆破工事の停止を求めている。工事の目的は、域内最大の国際河川であるメコン河を、500トン級の船舶が年間の大半を通して航行できるようにすることにある。

 この浚渫工事は「メコン河上流域航路改善計画」の一環で、ビルマ、カンボジア、ラオス、タイ、ヴェトナム、中国雲南省を対象とする大メコン圏(GMS)経済協力開発計画に組み込まれている。ADBはこの開発計画を「大メコン圏に住む人々の経済・社会面での福祉増進に寄与する」とうたっている。

 ビルマとラオスに挟まれた部分の浅瀬と早瀬については、2002年3月~4月と同12月~03年4月の間に主要な地点での爆破作業がすでに完了している。だが流域に住む2万2千人を超えるシャン、ラフー、アカー各民族が意見を表明する機会は一切なかった。残りの部分は03年12月~04年3月の期間に爆破が予定されている。

 報告書によれば、ビルマ軍事政権は爆破工事の期間中に軍事行動を強化し、これによってシャン州のメコン河流域で軍事化と人権侵害が深刻さを増す結果となった。例えば「ビルマ軍部隊は2003年4月第2週、タチレク(ターキーレック)郡チェンラプでラフー人女性1人を強かんした。この女性は結婚して3人の子どもがいたが、事件の後で夫に離縁され、住んでいた村を離れた」(12頁)。なお報告書によれば強かん犯は処罰されていない。

 報告書は、ビルマ軍政がシャン州東部で推進する開発計画は一握りのエリートだけを利するもので、環境破壊を引き起こす要因となっていると軍政を批判する。利益を得ている層の中には、1989年以降に軍政と停戦協定を結び、支配地域の天然資源開発の許可を軍政から得た元反政府武装勢力の指導者もいる。

 報告書を発表したラフー民族発展機構の推計によれば、シャン州東部の森林はすでに半分が消失しており、野生動物や林産物も急速に減少している。またビルマ軍政によるおざなりな環境保護対策のばかばかしさも指摘されている。一例を挙げると「シャン州チェントゥン(ケントゥン)のビルマ軍政当局は2002年10月、チェントゥン西「ガウス」地域の森林で、許可なく松を伐採した者を懲役12ヵ月と罰金2万チャット(約2000円)に処するとの命令を出した。だがこの地域の森林は、軍政自らが発行した伐採権に基づき、すでに丸裸同然の状態になっていた」(同28頁)のだった。

 ラフー民族発展機構はまた、ビルマのシャン州、ラオス、タイにまたがる黄金の三角地帯のビルマ側で、軍政が行う「対麻薬戦争」にも懐疑的だ。報告書では、ある民兵組織の指導者が支配下の住民にあへんの原料であるケシの栽培を禁止する命令を出したものの、実際には栽培は野放しで、収穫期にはアヘン税を徴収するケースを報告している。
 また代替作物栽培事業も形ばかりで、軍政による日常的な略奪行為によって無意味にさえなっている。報告書によれば「例えば、タレーの第316軽歩兵大隊所属の部隊は2002年12月、タチレクから約50キロメートル北、メコン河から約16キロ西のムンラネ丘陵にある5つの村のケシ畑を破壊し、補償措置として各世帯に小ぶりの鶏を1羽ずつ配給した。しかし3週間後、同大隊から部隊が再び派遣され、各村に5~7ヴィス(8~11キログラム)の鶏肉の供出を要求した。こうして村人が3週間前にビルマ軍部隊から与えられた鶏すべてが、村人の手で屠られ、肉として部隊の元に戻ったのだった」。

 ラフー民族発展機構は、メコン河開発によって貿易と投資が拡大しても、軍政の支配が続く限りは、現在ビルマ東部シャン州で実施されている開発プロセスがますます公正さを欠き、将来的には立ち行かなくなる可能性が高くなるだけだとの見通しを示している。

 同機構は結論として、域内の各国政府に対し、事業の影響を受ける地元社会が参加した形で適切な環境社会影響評価が実施されるまで、航路改善事業を延期するよう求めている。また「そのためにはビルマに真の平和と民主主義が回復することが大前提とならなければいけない」と報告書は述べている。

(訳、箱田 徹)

* ラフー民族発展機構(Lahu National Development Organization; LNDO)は故ベンジャミン・ミン氏によって1997年に創設された。2002年5月に「不穏な動き:シャン州東部でのワ人強制移住計画」(BurmaInfo訳による日本語版あり)を発表し、大きな注目を集めた。

出典:Shan Herald Agency for News, 'Lahu Report: Mekong reef-blasting highlights destructive development agenda in Shan State (No: 02 - 09/2003)', 5 September, 2003.