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社会

アウンサンスーチー 第53次国連人権委員会へのビデオメッセージ
1997年4月8日配信 アウンサンスーチー

国民民主連盟の指導者で、ノーベル平和賞授賞者のアウンサンスーチー氏は、第53次国連人権委員会に対する公式的な挨拶を、ビルマから密かに持ち出したビデオテープで行った。

質問1:現在、あなたとあなたを支持する議員に対して、政府が加える圧力はますます強まっています。これをどう考えますか

 ビルマでの人権侵害について語るとき、 私は-いいえ、私たちはもはや、どの権利が侵害されているかなどと考えることは不可能になっています。そうではなく、侵害されていない権利には何があるのか、という点でしか考えることができないのです。全ての権利が侵されつつあると言ってよいと思います。
 NLDのメンバーと支援者の行動に対する制限は本当に極端なものです。そうした制限によって、私たちの政治活動が妨害されるだけではありません。支援者の家族には経済的圧力が強く加えられているばかりか、経済活動、さらには教育に対してさえ政府は干渉してきているのです。
 両親が政府の命令に従わなければお前を解雇する、あるいは採用試験を受けさせないなどと脅された人たちもいます。命令に従わなかった場合、どちらの脅迫が実際に実行に移されるのか私にはわかりません。こうした脅迫はずっと行なわれています。
また、NLDのメンバーや支援者とかかわりがあるという理由で罰せられている人もいるのです。
 今現在でも、NLDに所属する議員の多くが辞任を強要されています。家族への圧力のためめ辞任を余儀なくされた議員もいます。また、いまも辞任を拒否している議員もいます。ある議員は長年住んでいた国営住宅を追い出されました。彼がNLDから脱党することを拒否したのがその理由です。
 現在も、係争中の事件が数多くありますし、NLDの議員に対する数々のでっちあげも存在しています。

 最近の事件で、私がかなりの興味を持っているのは、キンニュン将軍(訳注:第一書記)と親戚関係にある、ドクター・タンニェイン(Dr.Than Nyein)の件[訳注:ドクター・タンニェインの逮捕については、末尾の記事を参照のこと]です。
 ドクター・タンニェインは、免許が正式に発行される前に診療所で患者を治療していたという理由で逮捕されました。私の知るところでは、彼は昨日(訳注:4月1日)釈放され、1000チャットの罰金を課せられただけでした。もちろんこんなことはそうそう滅多には起こりません。NLDのメンバーが何らかの懲役判決を受けることなしに釈放されたという話を聞いたことがありません。ドクター・タンニェインが罰金刑だけで釈放されたのは、彼が逮捕された理由をみながあれこれ推測していたからなのかどうか、わたしにはわかりません。
 ドクター・タンニェインの逮捕は、キンニュンの権力掌握能力が弱まっていることの証拠だとする意見があります。こうしたうわさが広がったため、当局は彼を簡単な処罰で釈放するということが政治的に重要だと考えたのかもしれません。しかし、それならば同じような状況で逮捕された人たちもまた同様に簡単な処罰で釈放されるべきでしょう。

 別のNLDの医師についての事件があります。彼は、たしか過失致死で告発されました。私の解釈では、彼は瀕死の患者を病院まで運ぶために注射をしたのですが、患者が途中で死んでしまったというのがその理由です。当局は当初の告訴が有効でなくなったため、告発の罪状を変えていると思います。
 しかし、死体解剖をおこなってみたところ、その患者の肺はほとんど無いも同然だったことがわかりました。彼の肺はほぼ全て結核で侵されてしまっていたのです。ですから、患者はどちらにしろ死ぬしかなかったのだと結論する以外になかったのです。
 ところが、彼らは今度は告発の内容を変えようとしています。ドクター・タンニェインと同じ罪状、つまり正式な免許なしに診療所で治療をおこなった、という罪状で彼を告発しようとしているというではありませんか。
 ビルマの医師は診療所を運営する免許を持っていないひとがほとんどです。もちろん、こうした医師は開業権を保証する正規の医師免許を持っています。しかし当局が免許をわざわざ発行しようとしないため、大多数の医師は単に診療所免許を申請しないだけなのです。
 彼らはこうやって規則と規制とを自分たちに都合よく利用します。NLDの活動を制限するため、そして人びとが民主主義運動のため有効に働くことをやめさせるために、法律を好きなように使うのです。

 私の私道、私の家へ通じる道路は、今や3ヶ月にわたって封鎖されています。それが始まったとき、つまり彼らが最初に封鎖をおこなったのは9月のことでした。が、当時は断続的なものでした。ときおり道が空き、また封鎖されたりしました。しかし、12月3日以来道路は完全に封鎖されました。そういうわけで、現在3ヶ月になります。明日で、ちょうど3ヶ月です。
 そしてもちろん、この封鎖は私の家でNLDの活動を行わせないようにと意図されたものです。人びとは私に会いに来るたびに、当局の許可を受けなければいけません。
またビルマ人が私に会いに来るとき、国民登録証明書の提示を要求されます。そして時にはバリケードの所で長時間待たされることもあります。国外から来た人、特にジャーナリストの場合は、入ることを全く許可されないことがあります。
 バリケードのところにいる人間たちは、だれそれが来ると前もって知らされているのですが、もしある人を通したくないと思うのなら、通しません。彼らは同じことをジャーナリストや外交官に対しても行なっています。つまり、これもまた、ある種の嫌がらせ、国民民主連盟の活動を制限しようとする嫌がらせの一つだということです。
 ここでNLDが単なる一政党ではないという点をはっきりさせておきたいと思います。NLDはビルマにおける全ての民主化運動を代表しています。民主主義のために活動する他の全ての政党が事実上壊滅させられているからです。
 もちろん、少数民族政党があります。しかし、こうした政党は小規模なものです。また、国民的な基盤のもとに運営されているのではありません。活動は自分たちの支配地域の中に限られています。このことがNLDを全国的規模で活動し、民主主義を求める運動を代表する唯一の政党たらしめているのです。つまり、NLDの活動を制限することは民主主義を破壊するのと等しいものなのです。

 国際社会が国連総会の決議で、ビルマに対して民主主義の早期回復を要求していることを思い出していただきたい。それは1990年の選挙を通じて表わされた人びとの願いに沿ったものなのです。これは非常に立派な決議なのですが、実行されなければ意味がないのです。
 この決議はまた、ビルマの人びとが自国の政治プロセスに対する完全で自由な参加ができるようにと要求しています。しかし、これも実行されなければ意味がありません。
 私たちの政治的権利は日ごとに小さくなっていきます。より多くの制限と、より大きな弾圧が加えられているのです。当局はあらゆる種類の政治運動を壊滅させようと決意しているように映ります。
 やがてみなさんの多くが耳にするだろうと私は確信していますが、現政権は連邦連帯開発協と呼ばれる、社会福祉機関のようなものを設立しました。これを彼らはときおり政治的な武器として、また民主主義のために活動する人間に嫌がらせや脅迫を行うための単なる暴漢の集団として利用しています。
 11月に、チーマウン氏とティンウー氏(訳注:二人はNLDの副代表)と私が乗っていた車を襲ったのは、USDAのメンバーたちでした。だから私は、USDAがしばしばただの暴漢にも等しいことを行なっている、と言うことに何のためらいも持ちません。これは責任ある政府にあるまじきやり方です。責任ある政府は、政治的に壊滅させたいと望む人を攻撃させるために、ならず者を集めたりはしないのです。
 私たちは非暴力的な政治運動を行なっています。しかし、非暴力であろうとも、そうすることが正しいと考えられるのならば、政治運動は政府の政策に反対の意志を表わすことを許されねばなりません。そして実際に私たちが反対せざるをえない多くの政府の政策があります。というのは、それらが民主主義のための運動を破壊することを目的としているからです。

 このような政府の政策を不当で抑圧的なものだとして批判せざるをえないとしても、だからといって私たちは犯罪者のように扱われるべきではありません。私たちの家族は犯罪者よりひどい仕打ちを受けています。犯罪者の家族が罰せられることはないからです。もし罪を犯したら、それが殺人であれ、強盗であれ、暴行であれ、罪を犯した人は罰せられますが、その家族は罰せられません。私たちの場合が違うのは、国民民主連盟のメンバーだけでなく、その家族だというだけで、メンバーの家族が重く罰せられるという点です。そしてしばしば非常に重く罰せられるのです。
 現在の状況はこのようにひどいものなのです。ですから私たちは、皆さんが国民民主連盟に対してどういう弾圧が加えられているのか最大限の注目をして欲しいのです。
つまり、現政権が国民民主連盟のメンバーをどのように扱っているかに注目して欲しいのです。そこに目を向けることで、当局が民主主義がビルマに根を張るのを妨げるためにどれほどのことをしているかがわかると思います。
 そしてそれゆえ、現政権の行っていることは、国連総会での決議の精神に対してだけでなく、決議の内容に対する真っ向からの敵対行為なのです。

質問2:最近起こっている、宗教に関しての不穏な動きについて意見を聞かせてください。

 私の聞くところでは、大変に有名で、深く信仰されている仏陀の像、つまりマハーミャットムニー像が傷つけられたという事実がマンダレーにおける不穏を引き起こしたということです。僧侶たちはこのことを非常に怒っており、また彼らは当局が何らかの形でこの像に現れたもの-確かひび割れだったと思います-について責任を負っているのではないかと考えています。
 そして同じころ、イスラム社会に関する問題が始まりました。これはマハーミャットムニー像に起こったことから注意をそらすために意図されたものなのではないかと推測する人たちがいます。それが本当なのかどうかは私にはわかりませんが、現在のイスラム社会と仏教の僧侶との間の問題はこの国にとって、全くよい影響を与えないとは言えると思います。
 想像できると思いますが、当局はもちろん全ての事件をNLDのせいにしたがっています。何もかもをNLDの仕業にしようとしています。当局によれば、NLDがビルマで起こる事件をいつも指導しているとのことです。もし私たちがそんなに強い力を持っているなら、完全に権力を引き継いでしまうほうがましというものでしょう。
 現在、状況は落ち着いているようにみえます。イスラム教徒と仏教徒の間に多大な緊張があるような地域もおそらくあるのだろうと考えられますが、全体としては人びとはとても穏やかで、争いを望んではいないと思います。そして僧侶たちもまた、概して自制と平穏を呼びかけていると思います。

 真の原因、つまりこういったことの背後にある真の理由は、社会不安なのだと思います。地域で争いが起こるとき、それは社会不安に原因があるのです。社会不安はもちろん、政治的な不満や経済問題といった要因に関係しています。
 だから、仏教の僧侶とイスラム教徒の問題を単独で考え、ああ、そこには問題がある、などと言うことはできないのです。問題は国中にあるのです。それは今日のビルマに見られる全体的な不調和の兆候にすぎないのです。
 この状況が早く解決されることを私は本当に望んでいます。なぜなら、ビルマが地域に関係なく全ての市民にとって安全な国になってほしいからです。

質問3:現在、タイ-ビルマの国境において、しばしば難民が追い返されているという例についてはどうでしょうか。状況を知っていますか

 ええ、こうした事態をとても心配しています。国際社会が可能な限り難民を援助することを本当に望んでいます。
 そしてタイ当局は難民たちに同情をもって接し、彼らに危険な故郷に戻ることを強制しないでほしいのです。
 もちろん、なぜこれほど多くの難民がいるのかという理由は、KNUと軍事政府との停戦(交渉)が失敗したことにあります。そしてこれは今日のビルマにおける政治情勢の不安定さの別の一面を示しています。
 SLORCは停戦を達成し、国境に平和をもたらすことができたと主張しています。言うまでもなく明らかなことですが、それは違います。
 停戦は平和を意味せず、長期にわたる平和をもたらすなどということは全くありません。停戦とは、単にある期間互いに撃ちあうのをやめるというだけのことなのです。
撃つ準備は保たれたままです。それは、停戦を続けるのがもはや賢明でない、また不可能であると思われたときにはいつでも射撃を再開できるということなのです。

 私たちは少数民族の問題に関しても大きな不安を抱いています。もちろん、人びとは難民のことを知っています。しかし国境のこちら側にはカレン民族やその他の少数民族の村がたくさんあり、そこで人びとは多大な迫害や、弾圧、強制労働、拷問を受け、そして聞いたところでは、即決の処刑すら行われているということです。
 そういうわけで、事態は良いものではありません。難民問題に関しては、UNHCRが彼らを助けることを認められ、そして国際社会ができる限りの援助をすることを私たちは本当に望んでいます。

質問4:ビルマにおける現在の人権侵害の状況についてはどういった意見を持っていますか

 ひどいものです。前にも言ったように、どの人権が侵害されているかという点について考えることはできません。どの人権が侵されていないかという点について考えるしかありません。そして時として、侵されていない権利などないという結論に達することもあります。
 強制労働は日課となっています。そしてしばしば両親が強制労働計画で働く時間を作れないため、子どもたちが駆り出されています。経済状況は悪化しています。多くの人の生活水準が低くなっており、一日に二食を食べるためにも苦労しなければなりません。
 よって、両親が賃金を支払われない強制労働計画に行かねばならないということは、その日家族は何も食べられないということを意味します。結果的に、彼らは自分たちが稼ぎに行っているあいだ、子どもたちを強制労働へ働きに出すのです。
 そしてもちろん、建設現場で働く子どもたちもいます。強制労働ではないのですが、これもまた経済的な重圧のためです。多くの家庭は、子どもたちを働かせないことには家計を立てていくことができません。

 小学生に関するユニセフの記録を調べれば、こういったことがわかるでしょう。小学校を中退する子どもの割合は増え続けているのです。
 そしてこれは、私の解釈では、主に家庭の貧困によるものなのです。彼らには子どもたちを学校へ行かせる余裕がありません。なぜなら、彼らは子どもたちにきちんとした服を着せることができず、またいろいろな寄付、つまり教育は無料だと考えられていますが、実際にはさまざまな行事や、学校の設備などに対して寄付をさせられるわけで、そういった費用を払うこともできないからです。
 こういった費用を払う余裕がない、また子どもたちの稼ぎを家族が必要としている、などの理由で、両親は子どもたちが小学校を卒業する前にやめさせてしまい、そのため中退の比率は上がっています。つまり、ビルマにおける子どもの権利は緊急に注目をされるべき問題なのです。

質問5:現在の状況に関して、国際社会の責務は何であると考えますか

 国際社会の主たる責務は、国連総会での決議の内容を実行するためにできる全てをすることです。前にも言ったように、とても立派な決議なのですが、紙の上にとどまっているべきではありません。実行されなければならないのです。
 そして決議が全会一致で通った以上、国際社会はその内容を実行する義務を負っています。決議は重みを持つべきで、単なる一枚の紙切れとみなしてはいけないと思います。
 ビルマにおける人権の状況に対して、私は強力な決議を要求したいのです。前にも言ったように、現在の軍事政権によってほとんど全ての人権が侵害されています。そして、この絶え間ない基本的人権の侵害を終わらせるため、私たちは国際社会の強い行動を必要としています。
 私たちは、人権決議が特に政治的な諸権利の問題、そして人びとが強制労働や、強制移住といった重圧から自由になる権利について提言することを望んでおり、それはまた難民問題に関しても同様です。これらは私たちが主張したい三つの主要項目であり、政治的な権利は国民全て、特に国民民主連盟のメンバーによって享受されるべきものであると考えます。それはNLDが私の所属する党であるからではなく、前にも言ったように、NLDはビルマにおける民主主義運動を代表しているからです。そしてそれゆえ、国民民主連盟の政治的諸権利を守ることは、国連総会での決議の内容の実行を助けることにつながるのです。

 そして私たちは、強制労働と強制移住の問題を本当に真剣に扱ってほしいのです。
それはこの問題が家族の生命を危うくし、病気を引き起こし、一部の場合においては死に至らしめることさえあるからです。そしてもちろん、難民問題もです。
 結局、難民問題は政治問題から派生したものなのです。もしビルマの政治が安定しているならば、もし人びとの望みや、恐れや、願いや、苦労や、憤りを合法的な手段で表現することを許す民主的な体制があるならば、難民に関する全ての問題など存在しないことでしょう。反政府軍の問題もないでしょう。人びとは、問題を解決できる方法が他にないと感じるから武力に訴えるのです。
 彼らの問題を軍事的にではなく政治的に解決することを可能にする体制があるならば、ビルマに平和が戻ってくることだろうと思います。そしてその結果、難民問題はなくなることでしょう。一夜にしてそうなるというわけではありませんが、ひとたび正しい政治体制と政治的な風土がビルマにできたならば、確実に難民問題は解決されるでしょう。
 これが、国民民主連盟および他の民主主義のために行動する政党の政治的諸権利の保障を、人権委員会における最重要議題として扱って欲しいと考える理由です。

 また、国連事務総長の任命するビルマに関する特別報告者がビルマに入国することを認められ、何が起こっているかを理解し、体制に反対する人々と接触し、彼らがいかに迫害され、弾圧されているかをぜひ聞いてもらいたいのです。
 ビルマにおける人権の状況を監視するための人びとを適切な場所から招くという案はすばらしいと思っています。私はこれが国連によって支援されることを願っています。

(訳=大熊にゃー、箱田徹)

ジュネーブ
1997年4月8日火曜日 午後1時30分

Aung San Suu Kyi, VIDEO MESSAGE to the 53rd Session of the United Nations Commission on Human Rights, 1.30pm, Geneva, Tuesday 8 April 1997